第二章:動きだした不穏な影
第15話『無天ぐら寿司②』
「クロは何を頼んだの?」
「フッフッフッ、きてのお楽しみだ。といっても変わりダネは頼んでない」
「あら、もうきたみたい。サーモン、かしら? 上に何か乗っているけど」
「オニオンサーモンマヨだ。俺のお勧めの寿司だ。シズはサーモン好きだろ?」
「うん、そうね。寿司ネタのなかでは一番好きだわ。でも、タマネギとサーモンってあうのかしら? 食べるのにちょっとだけ勇気がいるかも」
「うまいぞ。苦手だったら、残りの一貫は俺が食うから無理しなくてもいいぞ?」
「うん。わかった、食べてみる。サーモンもオニオンスライスも単品であれば大好きだから、問題なく食べれると思うわ」
ふーむ。
シズの食べ方を見ていると、
やっぱりお嬢様だったんだなって感じがする。
箸の持ち方とかキレイだもんな。
口元を隠しながら食べるところといい、
良いところのお嬢様という感じだ。
普段は忘れがちだが、
ふとした瞬間に品の良さがにじみ出るな。
「問題なく食べられたか?」
「すっごくおいしかった! あんまりクセがない美味しさだから、定番メニューにしたくなる味ね。もう一皿おかわりしちゃおっかな」
「ははっ、そんな気にいってくれるとは。こっちも勧めたかいがあるぜ」
「マヨとサーモンの脂身をタマネギの辛さ、酢飯のサッパリ感で中和してくれるの。でも、美味しすぎて食べ過ぎちゃうかも」
「わかる。俺もぐら寿司に食うと最低3皿は頼んじゃうからな」
「あっ、ジョッキをもった店員さんがきているわよ?」
「ああ。レーンで流せない、ドリンク類とかは店員さんが直接持ってきてくれるんだ。ジュースのグラスがレーンで倒れたら大惨事になるからな」
「へぇー。よくできているものね」
「本当、この快適なシステムを考えた人は凄いよな」
「そうそう、これってもしかして話題のタピオカミルクティーかしら?」
(まぁ、結構前にタピオカブームは去ってているけどな……。でも、タピオカとかにトキメクあたりはシズも、普通の女の子って感じがする)
「そうだ。タピオカの専門店はなくなったけど、代わりにこうやってチェーン店で気軽に注文できるようになったのはありがたい」
「それにしても凄く太いストローね。はじめてみたわ……。それにグラス、ビールのジョッキね。よく見ると生ビールって書いてあるわ」
「もともとあるものをうまく使っているって感じだな」
「ところで、このタピオカミルクティーのストローって、タピオカブームが来る前は何の用途で使われてたのかしら?」
「うーん……っ、わからん。なんだろ? タピオカ以外、使いみち思いつかん」
「フラペチーノとかに使われてそうじゃないかしら? ちょと太すぎるけれど」
「あー。それは、確かにありそう。シェイクとか、スムージーとかちょっと飲みづらいやつとかは、この極太ストローなら快適に飲めそうだ。ところで味はどう?」
「とっても甘くておいしいわ。タピオカの触感って白玉みたいな感じなのね。モチモチしていて黒蜜の甘みが染み込んでいて美味しい。おかわり頼もうかしら!」
「おかわりしたくなる気持ちも分かるけど、飲みすぎないほうがいいぞ」
「どうして?」
「冷たくて甘くて極太ストローでゴクゴク飲めちゃうから実感しづらいけど、タピオカミルクティーはこのジョッキサイズだとラーメン一杯分のカロリーだそうだ」
「へぇー。それは控えないといけないかもしれないわね」
「うむ。健康によくないからな。あんまり飲んだら太りそうだしな」
「クロは、私が太ったら嫌いになる?」
「いや、ならない。シズは太っても好きだ。えっと、どう変わっても、好きだ」
(あぁ……なんで俺はこういう時にうまい切り返しができないんだ! もっとうまい返しはいくらでもありそうなもんだろ……ちっくしょーっ!)
「ふふっ、ありがと。わたしもそういってくれる優しいクロが好きよ」
「ふひっ……」
「そうね。ご忠告に従って、一杯だけにしておきましょうかしら。それに、なんだか甘いものを食べたらお腹いっぱいになっちゃったわ。クロももういいかしら?」
「そうだな。そろそろ会計してもらおうか?」
「そうね」
「それじゃあ。会計だ」
「あら、店員さんに皿を数えてもらう前にお皿を返却していいのかしら?」
「ああ……説明を忘れてたな。無天ぐら寿司は、この返却口に皿を流すと自動的に皿の数が数えられて精算されるんだ」
「面白いわね。お皿の通り口にセンサーか何かがついているのかしら? いろんなことを思いつく人がいるものね」
「それだけじゃないぞ。ほら、ディスプレイをみてみな。アニメが流れているだろ? 皿を入れた枚数に応じて、ガチャができるんだ?」
「キャラもかわいいわね。アニメのキャラクターみたい」
「そうなんだ。アニメのキャラもかわいかったり、かっこよかったりするんだよな。おっと、ガチャ2回分当たったみたいだ。ラッキーだな」
「お寿司のキーホルダーね。サーモンと、マグロのマスコットキャラかしら?」
「記念に持っていこう、シズはどっちが欲しい?」
「じゃあ、わたしはマグロくんをいただこうかしら?」
「意外だ。シズは、好きなサーモンを選ぶと思った」
「ふふっ。好きなモノを、好きな人に持っていたいと思っただけよ」
お互いのバッグに寿司のマスコットキャラのキーホルダーを付けて、
一緒に家路につくのであった。
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