第17話『幼なじみとネカフェのペアブースでお泊り』
「ペアブースでお願いします」
「はい。禁煙のブースが空いていますが、清掃中なので少しだけお待ちください」
シズと俺は新宿のネカフェに来ている。
お金があるのにネカフェを選んだのは、
守りの拠点として最適な場所だからだ。
「しばらく、ブースの清掃があるみたいだかあら食うものでも決めようか。シズはなにか食いたいものある?」
「これとかどうかしら?」
「旨いけど、結構辛いぞ。シズは辛いの苦手だろ?」
「そうね。それじゃ、オムライスにしようかしら」
「いい選択だ。俺はカツカレーを注文しよう」
「それにしても飲食店じゃないのに結構メニューがあるのね」
「そうだな」
本当は全部冷凍食品で組み合わせによってメニューを
かさ増ししているだけなのだが、夢を壊すのも悪い。
ここはだまっておこう。うん。
「シャンプーとリンスも何種類か選べるぞ」
「このLAXとかいうのにしようかしら」
「了解」
「クロはシャワー使わないの?」
「俺がシャワー使っている間にシズが俺の目から離れるからな。ウェットティッシュと制汗スプレーでしのぐ」
「クロには不便をかけちゃうね」
「気にするな。すべてが片付いたらゆっくり風呂に浸かるさ」
ブースの清掃が終わったようだ。
俺たちは飲み物を片手にブースへと移動する。
「それにしても、思ったより狭いわね。なんっていうか密着するからちょっと恥ずかしいかしら?」
「ま……まぁ、俺も極力は触れないようにするからさ」
カップルブースを使ったことがなかったから知らなかったが、
けっこー狭い。こんな人肌が密着するブースに男女が、
一緒にいたら間違いも起きようというものだ。
「ほらブランケットだ」
「ありがとう」
ネカフェ独特の安っぽくてゴワついたブランケットだ。
気休め程度の防寒対策になる。
俺も股間部を隠したい事情があるしな……。ふひっ。
そんなしょうもないことを考えていると、
注文したメニューが部屋に持ち込まれる。
あっという間に出来上がり。
まぁ、レンジでチンだから不思議ではないのだが。
「凄いわね。こんなに一杯。パーティーみたい」
「面白い感想だな」
「だって、そうじゃない? 唐揚げ、山盛りポテト、カツカレー、オムライス、それに炭酸飲料にポテトチップスにドッポにシャカリコ。夢のようだわ」
「シズの家ではこういうジャンクなものとかは食べないだろうからな」
「そうなの。みんないつかは食べてみたいと思っていたのよ」
「よかったな」
「うん。夢がかなっちゃった。ありがとうね、クロ」
くっ……笑顔がまぶしい。そして間近で見ると本当おっぱいデカイな。
いかんいかん……
このままだとブランケットでは俺の御神体を隠しきれなくなる。
胃に血流を送ることで下半身の血流を抑えるのだっ!
「じゃあ食おうか」
「うん。いただきます」
「いただきます」
ネカフェでも食事のまえに『いただきます』
って言葉がでるところはやはりお嬢様って感じだ。
それにしてもおっぱいがデカイ。
それになんとなく甘いにおいがする気がする。
「このポテトおいしい。でもなんの味かしら?」
「それは焼きトウモロコシ味のポテトだ」
「焼きトウモロコシだったの? そうね、言われてみればトウモロコシの味がするような気がするわ。コーラも揚げ物にあうわね」
「やっぱ揚げ物には炭酸飲料がよくあうな」
ネットカフェで不自由なおもいをさせているにも関わらず、
それを楽しめる前向きさは見習いたいものだ。
「ふぅ……結構食べたな」
「そうね。どれも美味しかったわ」
「シズもさすがに疲れただろちょっと横になるか?」
「そうね、それじゃあ横になろうかしら」
俺のすぐ目の前にシズの顔がある。
というか俺の右腕に胸の感触がする。
《……クロ隣のブースからなにかゴソゴソする音が聞こえない?》
《ああ、なんかカチャカチャという音も聞こえるな……》
さっきのカチャカチャ音はベルトを外した音だろう。
これは……お隣さん……つまり、そういうことか。
シズもなにが起こったのか察したのか、
顔がほんのり赤くなっている。
そんな青少年の気持ちなどお構えなしに、
マットの上を這うようなズッズッっという摩擦音と、
ブースがキシキシと
(意外にパンパンって音はしない物なんだな……つーか、そのほうが妙にリアルでエロい。すぐ隣で見知らぬ男女が……つーか、ネカフェで……そういう事をするのってエロ漫画のファンタジーだと思っていたけど、マジでやるんだなぁ……ひえぇ)
心臓の鼓動がヤバい。理性を保て……。
下半身の
「ふっ……はぁっ……あんっ……あぅ……」
声を殺しているのだろうが丸聞こえである。
シズの顔を見ると顔が真っ赤である。
シズと目と目があった。
気のせいかもしれないがなんとなく色っぽい感じの表情だ。
なんだかシズがジリジリと近づいている気がする。
こ……くぉれは、キスをする場面なのか?
こういうのを女の子の方からさせるのは、
男としては失格だ。
俺は意を決して顔をずいっとシズに近づける。
シズの大きなおっぱいによって阻まれ、
顔をうまく近づけられないが、あと10cm。
シズは逃げない。というか目をつぶっている。
《クロ、鼻息がくすぐったい……》
《我慢しろ》
《うん》
おっぱいの感触、隣の部屋の喘ぎ声、小刻みに寄れるブース、
シズの金色のサラサラな髪、そして甘い香り……
そしていま俺の御神体はシズの太ももに当たっているっ!!
《……あッ……っっ!!》
《??……大丈夫……どうしたの、クロ?》
シズは閉じていたまぶたを開けて俺の顔をのぞき込む。
《シズ、マッ……マジで……ちょっ、ごめっ。パンツ替えてくる》
俺の顔がよほど面白かったようで、
シズはクスクスと小さな声でおなかを抱えて笑っている。
俺はひとりブースを出てネカフェの受付に、
替えのパンツを買いにいくのであった。
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