第18話『幼なじみとペアブースでこそこそ話』
隣のブースのとても仲のよいカップルは寝たようだ。
2人分のいびきが聞こえるので間違いないだろう。
トイレに行くときに、隣のブースの女の子とすれ違ったのだが、
ごく普通の感じの学生だったのに驚いた。
黒髪ロング眼鏡の隠れ巨乳の地味子といった感じだ。ふひっ……。
陰キャ仲間の石崎や杉山が好きそうな娘だなと思った。
俺がかってに仲間扱いしているだけで、
実際のところは杉山とも石崎とも遊んだこともないのだが。
なんだったら、向こうの方から無言で
おもわず、俺もつられて頭を下げてしまった。
なんというか同じ学校の娘だったら目をあわせずらい
自体になっていたなと感じた。
さすが東京は性におおらかな街だなと思いしらされた出来事だ。
一つ気がかりなのは、
女の子の年齢が俺よりも明らかに下っぽい感じだった点だ。
だが大丈夫なのだろうか?
ただ幼く見えただけかもしれないが。
まぁ、楽しそうでなによりだ。
「クロは……その大丈夫かしら?」
「大丈夫だ。エアコンが効きすぎていて、ちょっと腹壊したみたいだ」
……我ながらひっじょーに苦しい言い訳だが、
しないよりはマシだよな。うん。
シズ、許せ……生理現象というヤツだ。
「そっ、そうよね。ここちょっとエアコン効きすぎているもんね」
「ははっ……そだね」
幼なじみのさり気ないフォローに感謝するしかない。
こういうときの気配りができるところは、
やはり五条院家のご令嬢といった感じだ。
――俺は一体五条院家を何だと思っているのだろうか。
それはともかくとしてだ、俺のパンツの話から、
別の話に切り替えないと気まずいことになる。
そうだ、そろそろ親父からの電話の内容を伝えよう。
「ここなら安全だ。俺の親父の電話の内容について伝える」
「うん」
「俺の家とシズの家が何者かに狙われている。敵は俺と同じ忍の一族である可能性が高い。狙いは、五条院家全員だ」
「わたしのパパとママは……。うん、クロのお父さんがいるから大丈夫そうね」
「そうだな。現役をしりぞいたとは言え、親父も忍だ。それに五条院家には何重の対侵入者用迎撃トラップが仕掛けられている」
俺が五条院家に足しげく通っていたのは、
親父が設置した対人用トラップの暴発防止のために、
定期メンテナンスを行っていたからだ。
定期試験でトラップが問題なく作動する事は確認済みだ。
シズのお風呂場を覗いていたのは……まぁ、事故だ。
メンテナンスの経路にたまたまお風呂場の窓があっただけだ。
他意はない。偶然、目に入ってしまっただけのことだ。
えっ、パソコンの中のピクチャーホルダの画像?
……記憶にございませんなぁ。ふひひ
「パパとママの方は大丈夫そうね。問題なのは、わたしたちのほうかな?」
「その通りだな。五条院家の地下には非常用発電装置も備えているから持久戦にも耐えれる防衛に徹すれば問題ない。こっちは楽ランに忍ばせた暗器と、カバンの中に隠し持った武器くらいしか頼るものがない」
「いっそのこと警察に駆け込むとかは?」
「残念だが、いま駆け込んでも何も証拠がないからな。保護してもらうのは難しいだろう」
それに、だ。
俺を刺したヤツの替え玉が監獄に居る事実がある。
警察内部に協力者がいる可能性が高い。
そう考えると保護してもらうという選択は、
とてもリスキーな選択だ。
いずれにせよまだ何も確定情報はない。
いたずらに不安を煽らないように、
シズには言わないか。
「そうね、まだなにも起きていないものね」
「そうだな」
「しばらくはこのネカフェで時間を潰す?」
「それも悪くない選択だが一箇所にとどまるのは多少のリスクがある。あまり同じところにはとどまらないほうが良いだろう」
「わかった。わたしになにかできることはなにかあるかしら?」
「そうだな、とりあえず今日は寝なさい。つっても、狭くて寝づらいとは思うけど」
「大丈夫、ありがとう。クロは寝ないの?」
「俺はちょっとだけこのパソコンで調べ物をしたら寝る」
「うん。わかった」
まぁ、俺は実際は眠らない。
こうでも言わないと義理堅いシズは寝ないからな。
まぁ、そういうところが好きなところなのだが。
タイミング的にほとんどありえないことではあるが、
万が一に敵が強襲してくる可能性もなくは無い。
存在を知られる事を恐れる忍の一族がそのような策を
取るとは考えづらいが、可能性がゼロではない。
俺はもとより7日間までなら眠らずに、
パフォーマンスを落とさず動ける。
だがシズの場合はそうもいかない。
ゆっくりと休んでもらった方がいいだろう。
「おやすみ、クロ」
「おやすみ」
かすかな寝息が聞こえる。
シズはものの五分で眠りについてしまった。
一日歩いて疲れたんだろう。
まぁ、こうやって寝ている姿を見ると、
本当にお人形さんのようだなと感じる。
一体、家に飾っておきたいくらいだ。
「さーて、気合をいれて明日のプランでも練りましょうかねぇっ!」
俺は、できるだけ音がしないようにゆっくりと、
パソコンのキーボードを叩くのであった。
第一部『日常編』完
=====================
第二部『外泊編』は新宿を舞台に、
敵対する組織との抗争、
そしてより密着したイチャラブがあります。
主人公のカラスが身を張ってヒロインを助けたり、
そういう男気を見せる展開になります。
そしてヒロインはより少年を好きになります。
――――やったぜっ!
ただ学園1の美少女の命を救っただけなのだが、なぜか惚れられてしまったのだが? くま猫 @lain1998
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます