誰も知らない色
碧海雨優(あおみふらう)
第1話
私が私の目で見ている景色、
田畑が広がる田舎の風景、ビルが迫るように立ち並ぶ都会の風景、犬の柄、猫の柄、この文字、
様々な色がこの世界には存在している。
この文字の色は、と聞かれたら大体の方は、黒、だと答えるだろう。それは共通の感覚で、誰しもがこの色は黒だと答える。その黒という色は、まやかしであるとも知らずに、はっきりと、答える。
私にとって黒は闇の色、だが、真っ黒な夜のように不安を掻き立てる時もあれば、ゴシックとして安定した心を取り戻させる色でもある。自分1人でも、場面によって色はすり替えられる。
あるいは、黒は絶望の色かもしれない。漆黒に塗り潰された押入れに閉じ込められた経験がある人にとっては。
色そもそもの見え方すら違うかもしれない。だってそうだろう?人の目が全て同じ構造であろうと、その見え方までもが同じだという証明はなされていない。そんな不安定なものにとりすがり、私たちは平然と黒という言葉を使って他人と共有し、安心している。
色とは美しく、そして不安定で、だからこそ輝かしく、眩しい。
その一瞬を、切り取って、写真にして、気持ちを伝えようとしても、伝わる時と伝わらない時がある。
そんな世界で、これからも生きていく。
違うのは、当たり前だ。理解して欲しいも、理解して欲しくないも、全て、愛おしい、
この世界で、これからも生きていこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます