光刺す
ぼんやりして、明かりを見つめる。ただ、番号が並ぶ、電子掲示板を見つめる。
これになんでも将来が出てくればいいのにな。
そう俺は思って、笑いそうになった。
周りに人がいることに直前で気づき、開き始めた、飽き始めた口を閉じる。
周りを見る。子供の戯れる声は耳に響く。
近くの植木鉢の土の香りに、少し顔をしかめる。そして、そこに植え込まれた場を洗礼するための花が賑やかに騒いでいるのを見て、また苛つき始めた。
何に苛ついているのかも、もう自分では分からない。
ただ光は眩しく目に当たってくる。なら俺も当たっていいのではないかな。そんなわけないな。
今すぐ叩きつけたくなる。あの光を消してやりたくなる。俺の番号が出てくるのは、かなり先だろうと、分かっているから。幸せそうな顔をして、家に帰っていく人並みがザワザワと揺れて、俺を刺激する。
前はなんでも出来たのに、誰でも平伏したのに、今では力はなんも必要ない。ただトンカチで叩かれて、ひたすらモグラの真似事ばかり。
そんなことを考えていると、俺の番号が光った。
次は、どんな仕事をもらえるんだろな。
自嘲気味に顔を歪め、椅子をひっ倒したい意思を抑えて、意識を遠のかせて、また今日も、お辞儀をするのか。
人の悪口を聞くのが人の仕事だと言うのなら、俺はモグラの方が気高く見えるね。お辞儀だって、何度でもしてやるさ。もう手は、足は、仕事以外じゃ酷使させない。
酒に飲まれた席で言った本音は、親友だと思っていた者に笑い飛ばされ、何処か見知らぬところへすっ飛んでいった。ドロドロに酔った俺は、泥仕合に、勝ったのか、負けたのか。
俺にはもう見つけられない。
小さい子供を見つめて、少し笑って、よく子供の頃に聞いた言葉をつい口に出す。
「俺みたいになるなよ」
俺は、今の生き方が好きだ。あれ……?
真っ暗になる。
すると、目の前に子供がいた。
さっき騒いでた悪ガキだな、と鬱陶しく思っていると、
男の子は何かを俺に慣れない仕草で差し出す。
ジュース?
隣の母親にモゾモゾと耳打ちしてもらいながら、声を張り上げる。
「おしごと、おつかれ、さま、です!がんばってください!」
「…………ありがとな。頑張るよ」
しばらくぼんやりとなった後、
口から機械的に出た言葉なんかじゃ足りない、と思って振り返るも、
ピョンピョンと去っていく男の子は振り向かなかった。
苦い笑いが口に浮かぶ。今までのと違う笑みだ。懐かしい。
「あんなに嬉しそうにしてやることも、俺には出来たんだな」
呟いてジュースを飲むと、子供の頃の味がした。
小さくため息をつくが、それは後ろ向きにではなかった。
うっし!と気合を入れると、
案外簡単に立ち上がれた。
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