カーテン
僕の顔を、清潔な白い布が隠してくれた。
そのとき僕は、泣いていたのか、笑っていたのか、僕でも分からなかった。
風にひらめくその人は、僕らを光から守って、そして光が漏れるのを防いでもくれる。
いつも自分の身を盾にして、矛盾した僕らを護ってくれる。
僕らはたまにその人を洗っていたわってやる。だが、それはその人が汚いからであって、綺麗なものだからそうしている人は何人いるだろう。
真実を知ってるのは、何人いるのだろうか。
僕は放課後、ひっそりと音を吸い込んでくれているその人に話しかける。今日も一日頑張れたよ、と。
その人は静かに揺れて、答えてくれた。何も言わずに、それでも側にいてくれる。それがどれだけ嬉しいか、
真実を知ってるのは、何人いるのだろうか。
僕はまだ知らない。僕がその気持ちを忘れていってしまうことを。
僕がその人のことをすっかり忘れて、クタクタになっても話しかけなくなるのを、
むしろ当たってビリビリに破いてしまうかもしれないことを。
「今日は、どんな日だった?」
答えがなくなる日は、いつ来るのだろう。
そして、何故それを、ヘビかムカデのように、ゾクゾクとした気持ちが身体を這うように、恐れてしまうのだろう。
「僕の言葉は、みんなにちゃんと、聞こえてるかなぁ?」
舌がちゃんとペラペラと回るようになったときに、紙のようにペラペラとなった時に、君はちゃんと聞いてくれるかなぁ。
僕は今日も、一種の恐れと共に、幸せを享受する。
好きだよ、と、怖い、が一緒にあるように。
見たくない、と、見たい、が一緒にあるように。
「僕は、カーテンみたいな人になりたいな」
そう言ったらカラカラされたけど、笑われたけど、
僕は、それが夢なんだ。
それが僕の人生だ。
カーテンみたいな人に、なりたいな。
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