異種族の距離感

言葉は通じる。
喜怒哀楽の発露も似ている。
身体つきは足が二本あるか尾びれがあるかの違い。
ただ、陸と海、彼らはすみかが違う……

そんな彼らは、どんな距離感で接すればより幸せになれるだろうか?

物語は人と人魚がときおり出会う……そんな漁村が舞台。
同じ言葉を話すので、出会えば意思の疎通はある。
ごく稀には恋に落ちる者もいる。
けれど、たいていは「お互いに、相手のやっていることの意味がよく分からない」。「お互いの在り方に、勝手に思い入れしている」。

そして陸の人々の思い入れによって、悲劇が立て続けに起きる……

後半に至って両者は互いに歩み寄り、互いの理解を深めようとするが、それでもつらいことはある。
なら、どうすれば良かったのか?

唯一の正解などない世界で、距離感に翻弄された二組の恋人たちの消息で幕を閉じる物語。
距離感を測りながら、同じ場所に立てないふたつの種族が、手探りで『よい距離感』を探していこうとする、ほの明るい希望の感じられるラストでした。