10話 この異世界は文明レベルが遅れている

「「「「こちらが中庭。」」」」




「「「「こちらが台所。」」」」




「「「「こちらが書簡室。」」」」




「「「「こちらが武器庫。」」」」




「「「「こちらが物見櫓。」」」」




「「「「こちらが城門。」」」」




「「「「眼下に広がるのがフェリテ村にございます。」」」」




のどかな農村風景が門の外に広がっていた。


平和だ。


太陽は高く上り家畜や畑を優しく照らしている。


だがこの城は随分と狭い。


まだ案内が始まってから20分と経たずに城内を周りきってしまった。



それに造りも悪い。

切り出した岩石をそのまま積んで作られたこの東ケルン城は狭く暗くジメジメしていて大変住み心地が宜しく無さそうだ。



俺が来たからには国内を統一するだけで無くこう言ったなもなき農村を立派に発展させて行く義務もあると再確認させられる。




「これは……急ぎ発展させていく必要性が大だな、考えておかねば。その前に空いている部屋とやらに案内してくれるかね。」




そう言ってメイド達に連れて行かれたのは城の北側面にある3畳程の手狭な部屋。



窓が一つあるがガラスなどははっていない吹きさらしの状態。



後は机とベッドと壁掛けの松明が一つずつ設置されており他には何も無い。



何と簡素な事か。



取り敢えず俺はベッドに座り込むとドアの外に待機しているメイド達に礼を言う。




「案内ご苦労だった。して、一つ質問がある。この世界に西暦は存在するかね?有るならば今年で何年か聞かせてくれ。」




そう、ずっと疑問だったのだ。



この城と言い、ちらっと見た村の民間と言い、とても文明レベルが一般のよくある異世界モノの世界ほど高そうには見えなかった。



それはここが田舎だからと考える事も出来るだろう。



つい数時間前までは高度に美しく発展した新東京都にいたのだからそれとこれを比べてしまうのは確かに良くない。



だがそれでも言わせて欲しい。

ファンタジー感溢れる異世界とはこんな場所じゃ無かったはずだ。



もっと綺麗でそして何よりレンガ造りや瓦屋根、窓ガラスなど高度な技術があるはず。



最低でも中世ならば5世紀以降のはず。



それこそラノベで有りがちな世界設定ならもっと先の13世紀前後だろう。



一体この世界は何世紀程なのだろうか……気になる。


だからこそ尋ねてしまった。聞いた事を後から激しく後悔するとも知らずに。




「「「「西暦は存在します。」」」」



「そうか!では何年だ?」



「「「「370年でございます。」」」」




おかしい。そんなはずはない。


それではまだ古代エジプトプトやローマがあった頃とさほど変わらぬではないか。




「俺が尋ねているのは王国暦ではない。キリストだムハンマドだと、そこらの預言者の生誕日から数える世界共通の暦だぞ。」



「「「「はい、仰る西暦です。今年で西暦370年にございます。」」」」




嘘だろ…おい。



未だかつて聞いた事もないぞ!


古代か、古代に召喚転生で異世界ヒァッホーイ?!


冗談じゃない!


何処で憧れる!?


一体何処の誰がそんな地味で詰まらなそうな異世界物に憧れを抱く!?



ここがもし日本なら古墳時代の花盛りではないか!

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