11話 全方位、敵だらけ
しかしそんな驚きを易々とクジョウ・ヨシフルは顔には出さない。
馴れているのだ。
多くの事に驚かされ悩まされて来た彼の政治家人生はそれ相応のメンタルがなければ成り立たない。
敢えて話題を反らすのも手の内だった。
「すまない。なら地図はあるか?」
「「「「ワールドマップの事でしょうか?」」」」
ワールドマップ?急にRPGゲームの様なワードが飛び出して来た事にクジョウ・ヨシフルは少し驚く。
「何処にあるのだ?そのワードマップとやらは?」
「そう言えば説明していませんでしたね。目に魔力を込めてみて下さい。」
そう言ってリリーヤ・ブルジアちゃんは俺の目を指さす。
「体内に感じる魔力をイメージして下さい。両眼に少量注ぎ込むんです。そうしたら右下の方にアイコンボタンと縮小されたワードマップが浮かび上がって来ますから。そこを意識すると拡大されます。」
「なんだか急にRPG要素が出てきたな。目に魔力を集中させる?その魔力とやらの感覚すら上手く掴めないのだが、どうすればいいんだ?」
「魔力の取り出し方は初歩中の初歩。本来は魔法陣を開いて、そこから適量を流出させるのですが、今回は魔方陣を開かなくても大丈夫なはずです。ちょっと体内の魔力プールから魔力を取り出してみて下さい。瞑想のような物です」
先ずは魔力を探さなければ話が進まない訳か。
俺は握り拳を額に当てる動作をしながら何とか集中して魔力探しに勤しむ。
「うむ、むむむむ。ん?これか!?」
奥深く、真っ暗な意識の沼の底に何か自己主張の激しい存在を見つける感覚。
必死で手繰り寄せようとするが…。
「掴み所が無い上に……コイツっ!際限無くデカブツだぞ!」
あまりのスケールの大きさに飲み込まれそうになる。
だが掴んだ。
手の平に収まる程のほんの少量だが引き出せたのは確かだ。
すると同時に紛れも無い違和感が血管に浸透する様な確かな物として感じられる様になる。
「これだ!集中……集中するのだ」
少しでも気を抜けば散霧してしまいそうなソレを全身から両眼へと集中させる際どい作業。
そしてやっとそれは成就する。
眼球に湿布を貼られた様な感覚を確かに目を開けてみた。
「うわっ。視界が…青い。」
確かに≪ヨシフ・フォン・ロンドベル≫とかかれたアイコンとミニマップが確認出来る。
色々と大変だったが、どうやら眼球に魔力を浸透させる事に成功したようだ。
「ヨシフルさん、魔力を注ぎ込み過ぎて目が青く光っていますよ。その10分の1程度の魔力量でも多い位です。」
「初めて魔力って奴を使ったのだ。まだ全然馴染まぬ。だが成功だぞリリーヤちゃん。アイコンは出てきたしワールドマップも今開いた所だ。」
ワールドマップを拡大して初めて分かったが…この世界は非常に前いた世界の立地に似ている。
いや、見るからにヨーロッパの見た目と全く同じだ。
その中でもフランス辺りからドイツ南方まで広がるフランゼ王国とかかれた広大な地域の北端、ベネルクス3国の南方の位置にこの城はある。
だが、どうやら分裂事態は載せられていない様だ。
「しかし、本当にこの国は巨大なのだな。フランク王国を彷彿とさせるが……明らかに違うか。周りの国家よりも強力だったのか?」
「「「「はい、フランゼ国王は神の御加護を受けておりますので、その繁栄は絶対です。しかし現在は内乱にあります。」」」」
何とも強大な王国だと感心しながらマップをスクロールさせて行きふと気が付く。
良く見たら上下とも国家に挟まれている。
下には……西ローム帝国!?
この瞬間、俺の頭にローマの文字がよぎった。
「どういう事だ!西ローム帝国だと!?そんな亡国まであるのか。その隣にはしっかり東ローム帝国なる物まであるじゃないか。上…上には……嘘だろ。イギリスの所にはイングリッド連合王国、この城の北東にはアングロサクソンの小国群まで!この国は完璧に囲まれてるじゃないか。」
周囲の国境をすべて囲まれている。これはとても大変な事だ。
莫大な国土故にあちこちの国と国境を接しているこのフランゼ王国は大戦時のドイツに非常によく状況が似ている。
周りの国全てが敵。
それが如何に恐ろしい事か。
その上国内はバラバラに分裂している。
これでは周辺国に襲ってくれと言っている様な物ではないか。
「どぅおおおおっしてだ!!」
急に叫びだす俺にメイド達が慌てているがそれどころではない。
夢もない、希望もない。全てが最悪のこんな国で生きていかねばならぬとは。
「あ…改めて尋ねる。今は何世紀だ?」
答えは変わらない。今の俺には頭を抱えているしか出来ない。
「あ……頭が痛くなる思いだ。」
あぁ…いと悲しきかな異世界ファンタジー。
だが、こんなハードモードな世界で俺はやって行くしかない。
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