7話 共犯者
想像と全く違う方向から答えが返ってくる。
「神……で、有りますか?」
「そう。神じゃ。あれは昨年の事だったのう。独立を宣言した日の夜、わしの頭上に神の御意志が降臨なさったのじゃ。」
はて、さっぱり意味がわからない。カロルド・フォン・フランゼ国王が俺の召喚を望んだのでは無く胡散臭い神とやらが俺の召喚を望んだだと?
「一枚の巻物が天から降って来たのじゃ。それにはこう書いてあった。王国暦438年1月7日午前9時00分00秒に東ケルン城王の間にて勇者が召喚される。彼の力を借り国内を統一せよ。神がそれを望んでおられる、と。それが今日、そしてそなたじゃ。」
そしてカロルド・フォン・フランゼ国王は続ける。
「じゃがな、悲しい事に御意志が下ったのはわしだけじゃ無いらしいのじゃ。斥候の伝えによれば最低でも20。それだけの国に同じ内容の巻物が有るとの事。わしらは試されておるのやも知れぬのう。誰がこの国の王に相応しいのかと。じゃろう?そこなる異国の服を着た少女よ。多くは語ってくれんじゃろうがのう。」
違うかのう?と核心に迫ってニヤリと尋ねるカロルド・フォン・フランゼ国王の疑念に対し、リリーヤ・ブルジアちゃんは単調な声音で答える。
「仰る通りです、陛下。僕以外にも案内人とその勇者は居ます。ですが、僕が神より命じられている事はただ一つ。ヨシフルさんをこの世界までお連れし、その後は彼の仕事を補佐せよと言う内容だけです。陛下の杞憂の通り、僕は多くを語る事が許されておりません。どうかご容赦を。」
それがリリーヤ・ブルジアちゃんの語れる限界だったのだろう。そんな低姿勢の彼女にカロルド・フォン・フランゼ国王は「良いのじゃ。」と首を横に振り、これ以上の追及をストップする。
「悪かったのう、意地の悪い事を聞いてしまって。老人の悪い癖だと思って水に流してはくれんか?
謝意を述べるカロルド・フォン・フランゼ国王に「滅相もございません」と礼節を弁えているリリーヤ・ブルジアちゃん。
程よく場が落ち着き、幾らかの疑念も晴れた所で、頃合いだと考えた俺は遂に本題に踏み込む。
「では、陛下。本題に入らせて頂きます。陛下は俺に何を望まれるのですか?」
場合によっては断るぞ、と言うニュアンスの含まれる曖昧な問いだが、カロルド・フォン・フランゼ国王はどう出てくるのだろうか。
安直に「仕えよ」などと言ってくるのならば、こちらも相応の条件を提示出来るのだが。
しかし、カロルド・フォン・フランゼ国王の返答は予想の斜め上を行っていた。
「是非とも、"共犯者"になってはくれぬか?そんなに疑わずとも、いきなり家臣の籍に入る事を強要したりはせんよ。」
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