肌に張り付く初夏の熱、拭いきれない冷たい孤独。

ここには人生がある。
誰もがどこかで通過してきた、「あの日」がある。

うだるような暑さの中を青信号に誘導されるように車を走らせる。
こちらを見ない助手席の彼女との上辺だけの会話。
こんなに近くの距離にいて、同じ空間、同じ時間を過ごしているはずなのに、本当のところは何も分からない。分かろうともしない。

夏の訪れを感じるじっとりとした暑さと共に、どうしようもない孤独の冷たさが、読者を捉えて離さない。