ここには人生がある。誰もがどこかで通過してきた、「あの日」がある。うだるような暑さの中を青信号に誘導されるように車を走らせる。こちらを見ない助手席の彼女との上辺だけの会話。こんなに近くの距離にいて、同じ空間、同じ時間を過ごしているはずなのに、本当のところは何も分からない。分かろうともしない。夏の訪れを感じるじっとりとした暑さと共に、どうしようもない孤独の冷たさが、読者を捉えて離さない。
車を運転中、カーステレオからは女性シンガーの歌声さっきから青信号がつづいていてあまりにつづくから不気味になって信号がやっと赤になってブレーキを踏むとなりには昔の彼女がいて急ブレーキに文句を言うもやっとして幻想的夏の昼間の夢夏が始まる