説明できないことの説明

 たまたまレビューがトップ画面にひっかかっていたので読んでみたところ、レビュアーさんたちがなぜそんな文面を残していったのかがわかりました。要するに、『面白い』の最上級の言い方は『面白い』以外にないんですね。そして説明できないっていうのは、誰も作者の思考を理解できない=思考に追いついていけないからで、「ここの部分がこうなってこうなるのが面白い」って言い方ができないからなんですよね。論理的に追えないっていうかね。例えばY-3のオーバーサイズがどういう種類の洋服で、だから英靖って人並み以上にファッションに尖った部分があるんだなあということはなんとか読み取れても、突然喋り始めた手袋を「面白そう」という理由で持ち帰るのは理解をぽーんと越えている。
 でもそれでいて、ちゃんと読者が置き去りにされない距離感になっているのがすごい。よくわからないポエムじゃなく、エンタメしててちゃんと楽しい。個人的にはエッセイ口調の時の村上春樹さんのような、指先に乗せた砂糖程のほろ甘いユーモアがある語り口がめちゃ好み。
 これが一つだけの物語じゃなく、短編集として山と積んであるわけで。

 推します。

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