私の稚拙な文章で申し上げても良いものか。そう躊躇しましたが、より多くの方々に読んでいただきたいので、ありのままに文を起こします。
まず、このような天才的な作品がWebで読めるなんて奇跡です。気取らない文面にして耽美。一体化した心理とアクション。しかも、予測不可能な展開なので常に刺激をもたらしてくれます。冒頭から何度裏切られたことでしょう。どれも印象に残る後味ばかりで、終了時のお題紹介ですら意表を突かれます。
実在する小道具の登場にも、ぜひ注目していただきたいところ。これによって、登場人物の好みや感性が何となくわかってしまうんです。滅多に文中の単語を検索しない私でも、逐一調べては感嘆、いや詠嘆してしまいます。
登場人物たちの言葉や行動――そして結果が、現実での教訓としてどんどん組み込まれていく。そんな私がいます。
つまり……天才です!!!!!!!
たまたまレビューがトップ画面にひっかかっていたので読んでみたところ、レビュアーさんたちがなぜそんな文面を残していったのかがわかりました。要するに、『面白い』の最上級の言い方は『面白い』以外にないんですね。そして説明できないっていうのは、誰も作者の思考を理解できない=思考に追いついていけないからで、「ここの部分がこうなってこうなるのが面白い」って言い方ができないからなんですよね。論理的に追えないっていうかね。例えばY-3のオーバーサイズがどういう種類の洋服で、だから英靖って人並み以上にファッションに尖った部分があるんだなあということはなんとか読み取れても、突然喋り始めた手袋を「面白そう」という理由で持ち帰るのは理解をぽーんと越えている。
でもそれでいて、ちゃんと読者が置き去りにされない距離感になっているのがすごい。よくわからないポエムじゃなく、エンタメしててちゃんと楽しい。個人的にはエッセイ口調の時の村上春樹さんのような、指先に乗せた砂糖程のほろ甘いユーモアがある語り口がめちゃ好み。
これが一つだけの物語じゃなく、短編集として山と積んであるわけで。
推します。