圧倒的筆力

あー、オッケー、わかった。この作者さんにはなにを書かせても面白いのだ、きっと。そうにちがいない。
そうしたある種、読み手への「あきらめ」すら感じさせる筆力。え、こんどはなに書くの? でもやっぱり面白いんでしょう? と。

でもなぜこうもあきらめてしまうのか。この作品の梗概なりプロットなりをポンと渡されて、たとえばわたしが書くとします。ええモチロン盛大にコケます。ふつう、このテーマは面白く書けないし書こうとも思わない。でもこの作者さんは違う。どんな題材も、どんな読み手も、説き伏せてしまう。

この筆力を前にしてはシチュエーションだの設定だの、しょせんは細切り大根です。メインのお刺身本体が素晴らしいのだから。

ゆえに、薬味や大根や枝葉末節にこだわらず、どん、と差し出されたお刺身をたらふく味わいましょう。面白いかな? ではなく、つぎの面白いものはなにかな? と。

わたしたちは無意識のうちに評定を試みます。もちろん先入観は排すべきですが、構えないで読んでみてください。騙されたと思って。騙されます。それが楽しいんです。

ひさびさに文章力でコテンパンにされました。また読みに伺います。

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