あー、オッケー、わかった。この作者さんにはなにを書かせても面白いのだ、きっと。そうにちがいない。
そうしたある種、読み手への「あきらめ」すら感じさせる筆力。え、こんどはなに書くの? でもやっぱり面白いんでしょう? と。
でもなぜこうもあきらめてしまうのか。この作品の梗概なりプロットなりをポンと渡されて、たとえばわたしが書くとします。ええモチロン盛大にコケます。ふつう、このテーマは面白く書けないし書こうとも思わない。でもこの作者さんは違う。どんな題材も、どんな読み手も、説き伏せてしまう。
この筆力を前にしてはシチュエーションだの設定だの、しょせんは細切り大根です。メインのお刺身本体が素晴らしいのだから。
ゆえに、薬味や大根や枝葉末節にこだわらず、どん、と差し出されたお刺身をたらふく味わいましょう。面白いかな? ではなく、つぎの面白いものはなにかな? と。
わたしたちは無意識のうちに評定を試みます。もちろん先入観は排すべきですが、構えないで読んでみてください。騙されたと思って。騙されます。それが楽しいんです。
ひさびさに文章力でコテンパンにされました。また読みに伺います。
2020年の夏は、みんなが去年思い描いていたものとはまるで違うものになってしまった。
本当ならオリンピックが始まるために街は活気づき、電車は満員、都内は大混雑、ひとびとがあふれ騒がしいものになっているはずだった。
それなのに、ステイホーム。
この『2020夏物語』でもコロナを扱ったものが多いようで、がっくりする。架空のコロナがない2020年でもいいんじゃないかなぁ――?
ところがこの作品はコロナのある2020年を逆手にとって、ソーシャルディスタンス、ステイホームをキーワードに一組の男女が親密になっていく様子を描いている。
コロナなのに?
コロナだから?
この辺はぜひ読んでみてほしいところだ。
コロナだって、それを上手く利用してしあわせをGETすることができるのだ。マジック!
「餃子」とソーシャルディスタンスを用いた恋愛攻防戦を楽しんでほしい。
こういう現実の2020夏なら大歓迎だ。