没落旧家の令嬢が嫁入りの日に、庭に咲き乱れる燃えるような赤い源氏車の花をみていた。その美しい横顔には秘めた思惑が……横溝正史的世界観で展開される、心理サスペンス。気泡が入り、表面が歪んている、現代では再現不可能な手作りガラス。そのガラスから見える世界のように、令嬢を取り巻く世界はゆがんでいた。放蕩三昧の末、財産を食いつぶす容姿だけはすぐれた父。孫もいる年齢で、若い後家をのぞむ成金爺。一家の生活を支えるため、人身御供として差し出せれる娘から目を背ける家人。ゆがまず一途に変わらないものは、令嬢の心の内だけなのかもしれない。
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