源氏車、燃ゆる。

作者 田所米子

30

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★★★ Excellent!!!

没落した令嬢+成金との縁談=悲劇、と相場が決まっているようです……。

本作も、没落した家の令嬢・朝子はは没落した実家を救うため、ヒキガエルのような醜い男の成金に嫁がされようとしていました。当初、彼女も、涙を流して縁談を拒絶していましたが……。

ところが、本作の主人公は「賢い女」。勉強ができる、ではなくて、才知に長け悪辣な策謀を巡らす、刺激的かつキュートな美少女です。……読みたくなってきたでしょう!そんな女子好きホイホイの作品です。

これは単なる嫁入りモノではありません。復讐の物語でもあります。
ネタバレになってしまうのでくわしくは言えませんが、主人公は、実のところ、「令嬢」とは程遠い生活を送ってきていました。
落ちぶれた実家、顔だけの放蕩好きの「うつけもの」といわれる父、少女をいじめ抜く「彼女」、そして、まだ未婚の女を弄ぶ成金。
そんな人々にたいする、復讐をとげようとする少女の、「これから三食事欠くことなく、人形のように着飾っていられるのなら。」は、哀しく、あでやかであり、妖艶であり、つややかでもあります。

人の心を手玉にとる悪女。悲しい過去を胸に抱えた小さな少女。
その二つが交錯した時、いとも華麗なる逆襲がはじまるのです。

あくどいけれど知的で最高にキュートな女子を味わいたい人にオススメです!

「賢い女子」が頭脳を駆使していままで自分を虐げていた人に優雅な一撃を加えていく、おどろおどろしくスリリングな物語。どうぞ、ご一読を。

★★★ Excellent!!!

没落旧家の令嬢が嫁入りの日に、庭に咲き乱れる燃えるような赤い源氏車の花をみていた。
その美しい横顔には秘めた思惑が……

横溝正史的世界観で展開される、心理サスペンス。
気泡が入り、表面が歪んている、現代では再現不可能な手作りガラス。そのガラスから見える世界のように、令嬢を取り巻く世界はゆがんでいた。

放蕩三昧の末、財産を食いつぶす容姿だけはすぐれた父。
孫もいる年齢で、若い後家をのぞむ成金爺。
一家の生活を支えるため、人身御供として差し出せれる娘から目を背ける家人。

ゆがまず一途に変わらないものは、令嬢の心の内だけなのかもしれない。