食べ物
その後、ムスタファーのもとに年老いた宿屋の主人がやってきて、こう言いました。「食べ物と飲み物についてお話しください」
ムスタファーは答えました。
「願わくは、もしあなたが、大地の芳しい香りによって生きることができたならどれほどいいことかと私は思います。着生植物[注1]のように光で事足れりとできたなら。
注1:着生植物 原文ではnabātāt l-hawā’ 英語版ではan air plant。
土壌に根を下ろさず、他の植物の幹や葉、岩の表面に付着して生息する植物のこと。
けれどもあなたは、生きるために殺すことを、そして渇きを癒すためにといって、小さな生まれたての子をその母親の胸から盗み取り、乳を搾り取ることを余儀なくされています。
それゆえに、ご自身のその行為を、崇拝行為のうちのひとつとしなさい。
そしてあなたの食卓を、野や畑からもたらされる清浄な捧げものが置かれる祭壇としなさい。人間の奥底に存する、それら捧げものよりも清浄なる者へのいけにえとするために。
動物を
『お前を屠るよう私に命じた力は、お前の代わりに今度はこの私を屠るだろう』
『その時が来たら、私もお前と同じように焼かれるだろう』
『なぜなら、お前を私の両手に引き渡した法は、この私をも、より強大な者の両手へと引き渡すからだ』
『お前の血と私の血は、もとより、天の木の栄養となるために差し出された汁でしかないのだ』
あなたがその歯でりんごを噛み砕くときは、心の中でこう言いなさい。
『お前の種は、私の身体の中で生き続けるだろう』
『そのりんごから明日にも出てくるであろう花弁は、私の心の中で咲くだろう』
『そしてお前の香りは、私の息とともに立ちのぼって来るだろう』
『すべての季節を私はお前と一緒になって喜ぶことだろう』
秋の日に、あなたがご自身のぶどう園からぶどうを摘み取って、搾り機へと運んでいくときは、心の中で、ぶどうにこのように語りかけなさい。
『お前と同じように、私もまたぶどう園だ。私のつけた果実は集められ、搾り機へと運ばれる。そして私は、新しい皮袋の中へ、新しいぶどう酒として詰められる』
冬の日にあなたがその皮袋からぶどう酒を飲むときは、あなたが飲むその一杯ごとに、心の中で賛歌を歌い上げなさい。
そしてあなたの賛歌を、ご自身にとってもっとも素晴らしい秋の日々の、ぶどうの木の、そして搾り機の思い出としなさい」
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