友情

 それから、ある若者がムスタファーに言いました。「友情についてお話しください」

 ムスタファーは答えました。

 「友は、あなたが求めている物を満たしてくれる人です。

 彼は、あなたが愛情を込めて植え、感謝の念を抱いて刈り取る畑です。

 彼は、あなたの食卓であり、あなたの暖炉です。

 なぜなら、あなたはお腹を空かせて彼のもとにやって来て、暖を取ろうとして彼を求めに行くからです。

 もし友があなたに彼自身の考えを明かしたならば、あなたの考えのうちにある否定の意を表明することを恐れてはいけません。また、あなたの心のうちにある賛意を出さずに留めておいてもいけません。

 なぜなら山というものは、登る者にとっては平野から見た方がよりくっきりと、かつより大きく見えるからです。

 もしあなたの友が沈黙しても、あなたの心は、友の心の声に耳を傾けることをやめてはいません。

 なぜなら、あらゆる考えや希望・願望が結実したら、あなたは大いなる喜びとともに、友人たちと一緒にその熟成した果実を収穫することになるわけですが、それらの考えや希望・願望を育てはぐくむ時にあっては、友情は言葉も表現も必要としないからです。

 たとえあなたが友と分かれたとしても、その別離を悲しんではいけません。

 なぜなら、あなたがその友のうちで、何物にもまして熱愛しているものというのは、おそらくはその人が居る時よりも、その人がいない時にこそ、あなたの心の目にとってはより明白になるからです。

 したがって、友情においては、あなた方の精神の深みを増長させようという目的以外の目的は、あるべきではありません。

 なぜなら、その愛のうちの秘め事を隠しているベールを取り払いたいという願望以外を持つような愛は、それは愛ではないからです。それは生という海に投げられた網にすぎません。その網が捕らえるのは、利益をもたらさないものばかりです。

 あなたの持つもののうち最良のものは、友のためのものであれ。

 もし友があなたの人生の干潮を知るべきであるならば、あなたの方もご自身の人生の満潮を示すべきです。

 というのも、たくさんの時間を一緒に過ごそうといってあなたが求め近づく友に、あなたは何を求めているのでしょうか?

 あなたの昼間とあなたの夜を活かしてくれる友を求めなさい、それが最善です。なぜならそのような友だけが、あなたの空虚や乾きではなく、あなたの求めている物を満たすことができるからです。喜びと交わされる快楽の土台が、友情の甘美さの上に来るようにしなさい。なぜなら、心は些細な物事に懸かっている露の中にも朝を見つけ出し、よみがえり、活力を取り戻すのですから」

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