ミトラ

 たまたまその時、占い師の女が神殿から出てきました。彼女の名前はミトラ。ムスタファーは愛と慈しみに満ちた目で彼女を見ました。ミトラは、ムスタファーがこの街でたった一夜とその朝を過ごしただけの時に、彼の前に進み出た最初の人物で、ムスタファーのことを信頼していたのです。

 ミトラは、敬意をこめてムスタファーに挨拶し、このように言いました。

「ああ、神の預言者よ、あなたは何度ご自身の宿願のものを追い求め、あなたから遠く離れていた船を探してきたことでしょう。

 そして今や船は到着しました。あなたが出立されるのを留めることはできません。あなたの夢の地、思い出の地、そして数ある願望のうちでもとりわけ切望している住まいの場所への郷愁はこのうえないものです。ですから、私たちのあなたへの愛は、あなたを縛り付けはしません。私たちはあなたを求めてはいても、それがあなたを捕らえることはありません。ですが、お別れする前に、あなたにお願いしたいことがひとつございます。

 私たちに説教して、あなたが持っておられる真理のうちの一部を、私たちにお与えになることを。

 私たちは、それを子どもたちに引き継ぎ、子どもたちは自分らの子ども・孫たちに引き継ぎます。このようにして、私たちのなかにあるあなたのお言葉は、時代が流れても、不朽であることでしょう。

 あなたは孤独のうちに、私たちの日常をつぶさにご覧になり、目覚めている時は、我々が泣いたり笑ったりするのを、我々が気づかぬうちに傾聴してくださいました。

 そこでお願いいたします、我々自身の秘められたものを明らかにして、あなたに示されたゆりかごから墓場に至るまでの生命の秘密を、私たちに教えてください。」

 するとムスタファーは言いました。

「オルファリーズの子らよ、私は何についてお話しましょうか。今この時まで、あなた方の心の中で震え続けあなた方の精神を動かしているものが、もしもあなた方に明かされなかったならば」

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