概要
いずれ〝源頼朝〟となる身であろうと。〝歴史〟と同じ道など、私は進まぬ。
久安三年(一一四七)四月八日。私は、源義朝(よしとも)が三男・鬼武者として産声を上げた。
武士として身を立てられている、父上や異母兄上方の官位は高くなかった。だが家族仲は良く、邸内にはいつも笑顔があふれていた。その幸せを純粋に享受できたのは、物心つく頃まで。
……これは、本来この世界に在るものか……?
ふとした疑問から始まった、出口の見えない疑念と葛藤の日々。それは、九歳の誕生日当夜まで続いた。
久寿二年(一一五五)四月八日。夢にて御神託をいただき、前世の魂が己とともに在ることを知る。
ひとつの体に、ふたつの魂。
違和感の正体はこれかと得心したが、新たな問題が生じる。前世の記憶に『保元の乱』と『平治の乱』があったためだ。家族の名が記された〝歴史〟しかも、死者として。
孤独だった前世の分ま
武士として身を立てられている、父上や異母兄上方の官位は高くなかった。だが家族仲は良く、邸内にはいつも笑顔があふれていた。その幸せを純粋に享受できたのは、物心つく頃まで。
……これは、本来この世界に在るものか……?
ふとした疑問から始まった、出口の見えない疑念と葛藤の日々。それは、九歳の誕生日当夜まで続いた。
久寿二年(一一五五)四月八日。夢にて御神託をいただき、前世の魂が己とともに在ることを知る。
ひとつの体に、ふたつの魂。
違和感の正体はこれかと得心したが、新たな問題が生じる。前世の記憶に『保元の乱』と『平治の乱』があったためだ。家族の名が記された〝歴史〟しかも、死者として。
孤独だった前世の分ま
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!古き良き美しい描写は、もはや芸術の域!
「ありあけの月のように──」
生まれた世界に違和感を覚えていた。源義朝が三男・鬼武者として、名実ともに九歳となった日の夜。神使の方から夢に呼ばれ、そして夢から目が覚める。
物語は、和風スタイル。
時代を遡った物語となっているのですが、作者様はとても歴史にお詳しい方だと感じた作品です。使う言葉や背景、描写の殆どが目に浮かび、古き良き美しい描写に芸術とさえ感じてしまいました。
こういう作風で描けるというのは、それだけで凄さがあり、歴史好きの人にはかなりハマる作品なのではないでしょうか。
無論、歴史をあまり知らない私ですらそれだけ楽しめる物語ということです。
多くは語らず、物語で語る。
まるで…続きを読む