藍色の夢(二)

 ひとつ気づくと、いくつものことに気づいた。


 神の眷属であるはずの方が、神気をすり減らしていらっしゃること。

 私を通して、どなたかを見ていらっしゃること。

 この方から、わずかに熱田のお祖父様の霊力を感じること。


 ひとつひとつを線でつなぐと、今のお祖父様の姿に行きついてしまった。

 私が生まれてから熱田を離れ、我が家の傍に小さな邸を構えていらっしゃるのだが……

 昨年より床に臥されることが多くなり、容態は一進一退を繰り返している。診てくださっている薬師殿は、


『よく……ここまで、生き永らえておいでです』


 と仰っていた。

 たびたび見舞いに伺う私は、ずっと気にかかっていたのだ。お祖父様を守るように包み込む、清らかであたたかな〝気〟の正体を──


「……無礼を承知で、お訊ね申し上げます」


 臣下の礼を取り直した私の声は、己が思うよりも緊張していた。

 空気の震えにより、神使の方が肩を震わせたのが伝わってきた。だが止められることはなかった。

 私はそれに甘え、


「祖父の、命の灯火を留めてくださっているのは……あなた様と拝察いたしますが……いかがでございましょうか?」


 視線を落として問いを口にした。


 沈黙が、空間に広がる頃。


「……本当に、聡い子なのね。聞いてたとおりだわ」


 神使の方は、儚げな声で苦笑なさった。


「顔を……上げて」


 許可を得た私は、手の形はそのままに、ゆっくりと姿勢を正した。


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