藍色の夢(三)

 見上げると、神使の方は哀しげに微笑まれた。愛しき者を見るような眼差しで。


「……よく、似てるわね」

「祖父と、でございますか?」

「えぇ。顔も……霊力もね」

「未熟の身なれど、光栄に存じます」


 顔立ちに関しては、母上がお祖父様に似ていらっしゃるゆえだろう。

 霊力に関しては、大宮司を二十年以上も務められた偉大な方と似ているというのは、恐れ多いことだが嬉しく思う。


「同じ目をしてるわ。あなたにも、守りたいものがあるのね」


 守りたい……私は、家族の顔を思い浮かべた。


「はい。何よりも、大切なものにございますゆえ」

「そう。強い心は大事よ。ただ……」


 神使の方はすぐ傍までお寄りになり、私の頬にふれられた。距離が近くなった分、身の丈の差を、よりいっそう感じた。


「『そなた自身も、いたわるのだ』」

「……それは……」

「あなたのお祖父様からの伝言よ。悲鳴を上げてる、あなたの心を救って欲しいって」

「──っ」


 私は、息を飲んだ。


「『家族に甘えることを、あの子は自身に許しておらぬ。その訳はわからぬが、〝家族〟の私では憂いを祓ってやれまい。……まことに遺憾ではあるが……』って」

「……お祖父様が、そのようなことを……」


 お会いするたび、深い眼差しの奥が、私を案じてくださっていたことを思い出す──


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