藍色の夢(四)

 ***



 疑念と葛藤を抱えたまま、家族や一族の方々と接した後。


 あの返答は正しかっただろうか。

 あのふるまいは、間違っていなかっただろうか。


 などと、己の言動に迷いが生じることが、たびたびあった。

 お祖父様は、私の揺らいだ霊力を感知なさると、「教えを施す」という名目で我が家へお越しくださった。

 ある時には、


『──そなたは、頭で考え過ぎる。相手の思いを受けとるのは、ここだ』


 私の胸を指し、言い聞かせるように、


『心で考えよ』


 と仰った。



 ***



 心で考える。

 その真の意味は、いまだにわからぬ。今宵、何かが変われば、わかるだろうか。

 私は神使の方を見つめた。


「あなたをここへ呼んだのは、そういう訳。今夜なら、あなたの負担は少なくなるはずよ」


 神使の方は気遣わしげな表情をなさった。


 私の負担……というのは、陰陽のことわりに則ってのことだろう。

 神界の方が大いなるご助力をくださる時、対象が童であれば、九歳の誕生日当夜をお選びになることが多いという。

 〝九〟という数字は〝神の領域〟を示す。また誕生日当夜は、それまでの古い殻を脱ぎ捨てた無垢な状態だそうだ。


 童のうちは神の子


 と言われてはいるが、持って生まれた〝気〟の力は様々。童自身の〝気〟が弱ければ、神気にあてられてしまう。よって、無垢な魂が〝神の領域〟にある九歳の誕生日当夜は、神界の方とつながるには最適の日と、お祖父様から教えていただいた。


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