主人公はソラという少年のピアノの音を聞くために、街路樹を抜ける。
ソラは主人公にとって、とても大切な存在だった。ピアノを弾くその手で、ナイフを弄び、手首にいくつもの傷を作る。ソラは学校はずっと休んだままで、日光を嫌い、影の中で生きてきた。そして、生きるのが辛いから、終わりにすると言う。
主人公は手首を切るソラを止めなかった。それは彼の生きるための儀式だったからだ。止めろと言うのは簡単だ。でも、それではいけないのだ。
そして、ソラが弾くピアノの音が止んだ。
主人公はそれでも、ソラの奏でるピアノの音色に導かれる。
そして、主人公は――。
レヴューを書くことがためらわれるほど、美しい文章で描かれた作品。
儚い幻想が、読者を引き付け、独特の言い回しが心に残ります。
是非、御一読下さい。
色々な生き方がある。
これは、今まさに大切にしなければならない気持ちだと思います。
思わぬ感染症の拡大により、人生を大きく狂わされつつある人が急増しています。
それでも、命があれば。
決して「おわり」なのではない。必ず、季節は巡ります。
今、思い通りにならないことに直面しても。
投げ出すのではなく、騙し騙しにでも、進める道を選ぶ。
苦しむ友へ向けて主人公が贈った言葉は、静かに深く心に染み込みます。
自らを追い詰めすぎないしなやかさと、ゆっくり空を見上げる大らかさ。
そんな柔らかさを持つ心が、今、最も大切なのかもしれません。