夏期休暇に閉じ籠められたキミを解放するボクの時間旅行

作者 宵澤ひいな

98

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★★★ Excellent!!!

ほんの一瞬の時間旅行。
それは、「ボク」の気持ちが合鍵という形でちゃんと残っていたからこそ、叶ったことかも知れません。

5年前の夏季休暇に閉じ込められた友を解き放った魔法の言葉は、5年前のボクが言えなかった言葉。
それは相手の真意を知り、その先を導き出す言葉でした。

一瞬の時間旅行でこんな風に言の葉を正すことができれば。
また名前を呼び合える日が来れば。
そうすればこんな穏やかな気持ちで前を向けるのでしょうか。

巡る季節にうまく人生を例えられています。
焦らなくていい。自分のペースで、季節も移り変わればいい。
筆者の愛情に満ちたメッセージを感じました。

★★★ Excellent!!!

儚く危うい雰囲気が美しい作品。

生きるために手頸を切る儀式を行う少年と、それを見守る主人公。退廃的な空気を孕みながらも、ふわふわとした甘美さが魅力的です。

ピアノとナイフ、そして合鍵と、鍵となるアイテムが物語を彩ります。

二人の少年がたどり着いた2020年の夏は…?

ぜひ皆様に読んでいただきたい作品です。

★★ Very Good!!

 上等なカクテルを味わったような読後感。
 本作は、読み進める最中もさることながら読み終えたあとにこそ頭の中を駆け巡る響きに身を任せるべきであろう。
 世間全体からすれば無力なはずの二人が、そして事実押し潰されかけるのだが、それでも力強い生命を見せつける。
 詳細本作。

★★★ Excellent!!!

短い物語の中に、濃密な「生」が流れています。「生」のカタチはひとつではなく、死の影がより生きることを引き立たせていますが、それだけじゃないです。

また、あらゆる場面や心理が美しい描写によって飾られ、彩られ、魅せられました。こんなSFは読んだことがありません。ただただ凄いです。

「今」だからこそ、読んで欲しい。

そんな物語です。

ぜひぜひ一度、ご一読ください!

★★★ Excellent!!!

魅力的な小道具が時間旅行という非現実に説得力をもたせています。
ソラは生きてゆくのがむづかしい子。
リストカットして命をつないでいます。逆説的。
人に接しては壊れてしまう儚い存在を
主人公は心配しつつ、自分の人生を送ります。
ソラの部屋へ向かう途中のプラタナスの道を歩くように。

全2話、前半と後半に分かれています。
わたくしは少女漫画の雰囲気を感じました。
ラストは前向き。こんなご時世で、ほっとしますね。

★★★ Excellent!!!

 主人公はソラという少年のピアノの音を聞くために、街路樹を抜ける。
 ソラは主人公にとって、とても大切な存在だった。ピアノを弾くその手で、ナイフを弄び、手首にいくつもの傷を作る。ソラは学校はずっと休んだままで、日光を嫌い、影の中で生きてきた。そして、生きるのが辛いから、終わりにすると言う。
 主人公は手首を切るソラを止めなかった。それは彼の生きるための儀式だったからだ。止めろと言うのは簡単だ。でも、それではいけないのだ。
 そして、ソラが弾くピアノの音が止んだ。
 主人公はそれでも、ソラの奏でるピアノの音色に導かれる。
 そして、主人公は――。

 レヴューを書くことがためらわれるほど、美しい文章で描かれた作品。
 儚い幻想が、読者を引き付け、独特の言い回しが心に残ります。

 是非、御一読下さい。

★★★ Excellent!!!

色々な生き方がある。
これは、今まさに大切にしなければならない気持ちだと思います。

思わぬ感染症の拡大により、人生を大きく狂わされつつある人が急増しています。
それでも、命があれば。
決して「おわり」なのではない。必ず、季節は巡ります。

今、思い通りにならないことに直面しても。
投げ出すのではなく、騙し騙しにでも、進める道を選ぶ。
苦しむ友へ向けて主人公が贈った言葉は、静かに深く心に染み込みます。

自らを追い詰めすぎないしなやかさと、ゆっくり空を見上げる大らかさ。
そんな柔らかさを持つ心が、今、最も大切なのかもしれません。

★★★ Excellent!!!

自傷行為を繰り返す、不登校のソラ。見守っていた「ボク」でしたが、ある日のソラの言葉の真意を読み取れず、それによって悲劇が起こります。その5年後、成長した「ボク」に不思議な出来事が起こり……
モチーフが効果的に使われた、重苦しくも美しく輝く物語でした。

★★★ Excellent!!!

リストカットを繰り返す危うい少年「ソラ」と、彼を見つめる「ボク」の物語。

少年たちの時間を閉じ込めた、2015年の夏の記憶。
その先の物語が映し出される、2020年の夏の模様。

ひととき戻った時間が、また進み始める。
二人の物語の行方はどこへ――。

ピアノの演奏を背景に紡がれる、作者らしい美しい言葉に溢れた、叙情豊かな小品です。