投げ出された手首の、その先へ。

 主人公はソラという少年のピアノの音を聞くために、街路樹を抜ける。
 ソラは主人公にとって、とても大切な存在だった。ピアノを弾くその手で、ナイフを弄び、手首にいくつもの傷を作る。ソラは学校はずっと休んだままで、日光を嫌い、影の中で生きてきた。そして、生きるのが辛いから、終わりにすると言う。
 主人公は手首を切るソラを止めなかった。それは彼の生きるための儀式だったからだ。止めろと言うのは簡単だ。でも、それではいけないのだ。
 そして、ソラが弾くピアノの音が止んだ。
 主人公はそれでも、ソラの奏でるピアノの音色に導かれる。
 そして、主人公は――。

 レヴューを書くことがためらわれるほど、美しい文章で描かれた作品。
 儚い幻想が、読者を引き付け、独特の言い回しが心に残ります。

 是非、御一読下さい。

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