あとがき
ダイヤモンドプリンセスで起きた事は間違いなく悲劇でしたが、日本だけでなく世界中があの船に注目し、大勢の国会議員の先生方にもこの船の成り行きを見守っていただけた事は不幸中の幸いでした。
下船時には、河野防衛大臣や、参議院議員の佐藤正久先生からも労いのメッセージを頂戴し、私のようなこんな末端の乗船客の事も気にかけて下さっていたのだと、感謝の念に堪えませんでした。
その際に、河野防衛大臣には今回の支援について御礼の言葉をお伝えさせていただきましたが、
改めて、日本政府、厚生労働省、防衛省、また、医療関係の皆様、そして支援に携わって下さった全ての皆様に、心より深く感謝申し上げます。
こうした大きな支援のおかげで、乗船客達は船内だけでなく、下船後も手厚い医療サポートを受けさせて頂く事が出来ました。
しかし、新型コロナウィルス大流行の最中、世間の誰からも注目されずに、苦しい思いをしながら生活されている方が大勢いる事も決して忘れてはいけないと思います。
その代表的な存在が、現在妊娠中の方です。
とある妊婦さんの苦しい状況の声を取り上げてTwitterで呟いたところ、
プロフィールに愛国的な言葉を並べた女性から、
「政権批判をするとは何事だ!あなたには失望した!」
といった類いのコメントを貰いました。
私自身は、政権批判などしたつもりは無かったのですが、そのようなコメントを送ってきた方が女性というのもあって、とても残念な気持ちになりました。
暗いニュースが世の中を埋め尽くす中で、新しい命の誕生は、この国の希望の光です。
その希望を私たちに届けて下さる妊婦の方達が想像を絶するような過酷な環境で出産を迎えようとしています。そのような厳しい立場にある方に少しでも寄り添っていきたいと心から思います。どうか一日も早く支援の手が届く事を祈ります。
現在、多くの人々が新型コロナウィルスを理由に非常に苦しい立場へと追いやられています。
あのクルーズ船の中にいたからこそ、そういった「コロナ弱者」の方達の辛い気持ちが痛いほど良くわかります。
そしてこれからは、誰もが苦しい環境になって行くと予想されます。
収入の不安、生活の不安…… 持病があるのに、これからは思うように通院出来なくなるかもしれない……
今、想像している以上のありとあらゆる悪い出来事が襲い掛かってくるかもしれないのです。
皆さま、きちんと心構えと備えは出来ていますでしょうか?
経験者目線で街の人々の様子を眺めてみると、余りにも無防備で非常に心配になってしまいます。
「陽性患者は隣の地域だから大丈夫」
「怖いけど、でも自分の近くにコロナは多分いないだろう」
そう思っていませんか?
あのクルーズ船にいた私たちも、コロナは少し離れた陸の出来事と考えていました。
しかし、蓋を開けてみれば、自分たちのすぐ目の前にいたのです。
同室者に陽性患者の方が出てしまったお部屋も沢山ありました。
船内のコロナ陽性患者の約半数は、『無自覚無症状』でした。
日本も既に無自覚の陽性キャリアの人たちが大勢いると考えられます。
一見、元気そうに見える今すれ違った人、目の前の友人や同僚、一緒に暮らしている家族が、既に陽性患者かもしれないのです。
いえ、もう自分自身が陽性キャリアの可能性だってあります。
もう一度、
「自分自身や愛する人をコロナから守るための行動」
を誰もが良く考える事が必要だと思います。
私の親友達は、お花見やお誕生会など計画していたパーティーを全て取りやめました。
それは、自分の楽しみよりも相手への気遣いがあったからです。
「あなたが誰よりも大切だから、あなたとは会わない」
を実行したのです。
それこそが、愛のある行動だと思いました。
そして新型ウィルス流行が終息したら、必ず全員無事で再会する事を誓い合いました。
今は真っ暗闇に見えるかもしれませんが、人類は必ず新型コロナウィルスに打ち勝ちます。
それはそう遠くない将来だと私は信じています。
どうかこれ以上、新型コロナウィルスによって悲しい思いをする方が出ない事を祈ります。
再度になりますが、この度ご支援頂いた全ての皆さまに心より感謝申し上げます。
2020年3月
ダイヤモンドプリンセス 乗船客
ダイヤモンドプリンセス乗船手記 湊 櫻 @Cruisediamond
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