SFの血脈を持つ純文学

 読んでいて、まず目に止まったのは林業のくだりだった。実は、ごく間接的に真似事でそれに接触したことがある。もっとも事務方としてだが。流米単価が半額近くになるとあってははなから勝負にならぬことは明白だろう。実質的な棄民ならぬ棄業政策だ。
 そんな話を延々と前置きしたのは、本作が『人』なるものを徐々に捨て去っていく過程が克明に描かれているからだ。それも、母の愛情という観点から。
 左様、血液に反応する石でできた特別な仮面をかぶったり、生きている人間の脳を本人の目の前で自分が洗脳した恋人と一緒に食べたりせずとも人間は辞められる。
 なんとも異様な迫力を持つ怪作であった。
 必読本作。

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