息がつまるような、雪、雪、雪


 飛騨高山の雪に埋もれた日常が描かれています。

 雪は、たまに降る分には綺麗でわくわくさせてくれるんだけれど、これが毎日来る日も来る日も積もりつづけるとうんざりしてくる。その閉塞感に満ちた日常。
 重くのしかかる雪の描写が秀逸です。白くふわふわして美しいはずの雪が、灰色でぼってりしていて、その重さに、もう息がつまるようです。

 そんな中、主人公は図書館で借りた本を返しに車で出発します。
 たったそれだけのことが、つらい。いや、たったそれだけのために雪の海を渡ることこそが、つらい。
 そして、やっと辿り着く図書館で主人公が見つけたものは何か。

 はっと目が覚めるような短篇でした。

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