少女たちは擦れ違う

ポル・ポト政権下の子ども兵、ケツァナとペイファの日常が瑞々しく、時に土臭く切り取られた物語。とても仲良しな二人の会話からわずかに見える、赤ん坊の顔の産毛ほどの違和感が次第に像を結び、戦争と共に劇的な結末へと落ちていく。

僕はヒロシマの生まれです。なにか嫌なことがあったときとか、気が病んで腹が減ってもごはんを食べる気にすらならない昼日中に、こんなふうに自分に言い聞かせます。「原爆を受けて焼けた身体にウジが沸くのを我慢して生きるしかなかったあの日の人たちに比べたら、こんなのなんでもねーよな」と。まあそれでも、現代をまっとうに生きることってハードルが高いのですけど、物語の二人の少女が地面に穴を掘りながらはしゃいでいるシーンを読んで、これがあたりまえの社会もあったんだって。ケツァナのあの笑顔が含んだ意味を忘れちゃいけないんだなあって。机に一日中臥せってないでとりあえず飯食おうって思わせてくれる、そんな力を持った物語じゃないだろうかって考えています。

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