皐月の闇に薔薇は融ける

作者 宵澤ひいな

76

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★★★ Excellent!!!

白い肌の美しい少年。彼が追い求める、黄金の薔薇。
青年が語るおとぎ話の、黄金の薔薇に会える場所。

何もかもが幻想的で、人の世の痛みをもすべて超越しているかのような錯覚を起こします。

薔薇として生きる願いを捨てられない少年と、彼の危うさに惹かれていく青年。
二人が夢見た、薔薇と詰草があふれる夢の世界。

この作者ならではの、美しい言葉の海に沈みこんでいきたくなる作品です。
じっくりと、言葉のひとつひとつを味わいたいと思います。

★★★ Excellent!!!

青年は図書館で、神秘的な少年と出会い、その後、徐々に少年に惹かれていきます。
少年も、自分の言葉に耳を傾けてくれる彼に絶大な信頼を寄せていきます。
淡々と文章が流れていくので、とても読みやすく、さらに選び抜かれた言葉が本当に美しい。
なにか、御伽噺のような、とても不思議な余韻が心に残ります。

★★★ Excellent!!!

宵澤ひいな様の文章は憂いがあり、そして繊細で、かつ美しい。
この作品も然り。
アキラの目を通して描かれるミコト君の描写の美しさにため息がでます。
病院というある意味異世界での二人の交流。そして訪れる別離と悲し過ぎる再会。
二人の残酷なまでに美しく、閉ざされた世界に何を思うでしょうか。
ぜひ宵澤様の描く世界に浸ってみてください!

★★ Very Good!!

 昔、『大人のための残酷童話 妖精写真』なるイギリス映画があった(原作 スティーブ・シラジー、監督 ニック・ウイリング、敬称略)。
 新婚早々に妻を失い、妖精に取りつかれた写真家を襲う悲劇を描いた内容だ。写真家はある特別な花を食べ、その度に妖精と接触していた。時に花は異世界と現実とを橋渡しする。
 そして本作、二人の間に花開く薔薇は確かに異世界をもたらした。それは二人にとって至福の共有だったろう。しかし同時に、現実世界へ戻る度、あたかも加熱したガラスに急に冷水をかけるがごとき負担も強いた。
 詳細本作。

★★★ Excellent!!!

どこまでも醇乎たる少年の、一縷の望み。
それは優しく綺麗だが、現実と両立するには余りにも酷なもの。
……でも。そこまで残酷で苦しいのは、何故だろうか。清廉な彼の心のせい? あるいは彼を取り巻く現実のせい? それとも……

そんな少年と邂逅するのは、東洋医学の一端を志す青年。
一度は分かたれるも、運命の悪戯か二人は病院で再会する。
心の拠り所を見つけた彼らが、現実を見つめ辿り着いた場所は……

非常に静謐で、闇色を纏う物語を、詩的で美麗な表現が読み手を引き込んでいきます。
闇色を透明に描くと、より克明な闇と、その奥に瞬く小さな輝きの両方が見えるんだなぁと、感慨深く思いました。

是非一度、読んでみてください。

★★★ Excellent!!!

 図書館の暗がりの中で、少年と青年は出会った。青年は少年に、「金色の薔薇を知らないか」と問われたので、薔薇の図鑑で示した。少年は、この薔薇から自分が生まれたと信じていた。
 青年は東洋医学を学んでいたが、肺炎のために入院すこととなる。青年の病室の隣は、あの少年が入院する病室だった。人形のような少年は、どこに金色の薔薇が咲いているかと問う。だから青年は、少年に御伽噺を語った。二人は病室を抜け出して、売店に行ったり、担当医の目を盗んで密会したりする。
 そんな中、青年は回復し、少年に何も告げないまま病院を去る。そうして東洋医学の道に進んだ青年だったが、少年のことを思い出す。しかし……。

 深海の中にいて、呼吸をするような感覚になる一作でした。
 少年の美貌と危うさが、美しくも退廃的に表現されています。
 詩的でありながら、本質を突くような言葉がちりばめられ、
 読者の胸に迫ります。

 是非、御一読下さい。

★★★ Excellent!!!

黄金の薔薇を探し、流離う少年。
彼に、過去の忘れ物を垣間見た青年。

灰色の病棟。
妄想。瀉血。
心をねじむけられる。

無垢な瞳。淡い皮膚。
薔薇に託した、希い。
二人の、優しい御伽譚。

少年の闇と光。病とは、何か。

正しい姿で、芽吹きたかった。
呟いた少年に、伝えたかった。

あなたのままで、いられたなら。
本当に、正しいのは……。

二人が最後に、辿り着いた世界。
その美しさを、心に刻む。
皐月の薔薇を忘れない。