僕の居場所を見つけてくれた、貴方なら。

 図書館の暗がりの中で、少年と青年は出会った。青年は少年に、「金色の薔薇を知らないか」と問われたので、薔薇の図鑑で示した。少年は、この薔薇から自分が生まれたと信じていた。
 青年は東洋医学を学んでいたが、肺炎のために入院すこととなる。青年の病室の隣は、あの少年が入院する病室だった。人形のような少年は、どこに金色の薔薇が咲いているかと問う。だから青年は、少年に御伽噺を語った。二人は病室を抜け出して、売店に行ったり、担当医の目を盗んで密会したりする。
 そんな中、青年は回復し、少年に何も告げないまま病院を去る。そうして東洋医学の道に進んだ青年だったが、少年のことを思い出す。しかし……。

 深海の中にいて、呼吸をするような感覚になる一作でした。
 少年の美貌と危うさが、美しくも退廃的に表現されています。
 詩的でありながら、本質を突くような言葉がちりばめられ、
 読者の胸に迫ります。

 是非、御一読下さい。

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