重大な使命を帯びたふたりの旅路を細緻に描く、硬派なハイファンタジー小説

(第一章まで読了時のレビューとなります)

 まずプロローグでは、他とは一線を画する緻密な世界設定と、それを表現し得る圧倒的な文章表現力に脱帽します。それは史実を引用した設定が多く、確かな整合性を持って世界を構築していることが解ります。その背景となる勢力争いの図式が大変複雑であり、容易には全容を見せてはくれませんが、二人の主人公達の旅を通してそれを紐解いていくという謎解きの楽しみがあります。

 第一章ではまだ二人の旅が始まったばかりではありますが、主人公兼ヒロインの二人の人となりが次第に解ってきます(依然としてミストリアちゃんは謎多き子ですが)。このエピソードでは現実の厳しさ、辛いことも多いですが、ある意味箱入りお嬢様であるレイネリアちゃんの心の成長を暖かく見守ることができ、ミストリアちゃんと共に嬉しい気持ちになれると思います。

 全体を通して、心情や情景は徹底した3人称視点の地の文で客観的に述べられますが、その巧みな文章表現により、読者はまるでその場に居るかのように感じることができ、凄まじい没入感を得られます。
 タグにはガールズラブ?とありますが、ふわふわと浮ついたものではなく、バトル物の少年誌にあるような淡い恋模様であり、見ていて微笑ましいものです(少なくとも第一章時点では)。ですので、百合は無理!といった方も、毛嫌いせずにお読みいただきたいです。

 このまさに古き良き硬派なハイファンタジー小説を、是非ともお手にとってみてください!
 

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