頑なな彼女の心を動かしたのは、それを受け継ぐ意志だった。

 女性型アンドロイドの主人公は、若くして難病を患った人間の男性の介助用として、派遣された。その男性は作家だった。
 主人公はマスターである作家の男性と暮らす中で、様々な差別を経験する。その差別を象徴するのが、首のカラーであり、番号だった。人々はアンドロイドに首輪をつけ、番号で呼んだ。利用することはあっても、同じ空間にいることは不吉とされたほどだった。
 しかし主人公のマスターは、頑健な意志の持ち主だった。アンドロイドの主人公に名前を付け、対等に扱った。それが、転機になった。主人公はマスターの旅行に同行するが、そこで事故が起こる。マスターは意識を失い、周りは主人公のせいで事故が起きたと騒ぎだす。主人公のおかげで、その旅行者たちは、一命をとりとめるが、その代償に主人公は宇宙に投げ出される。
 意識を回復した主人公は、同じアンドロイドの女性から、今ではアンドロイドと人間は友人だと語り、主人公に地球に帰らないかと誘う。マスターのいない地球に帰ることはない。主人公はそう心に決めていた。しかし、マスターが書いた一冊の本を渡されて、主人公はある決意をするのだった。

 差別と和解というテーマを、ここまで温かく描いた作品は、本当に素晴らしいの一言に尽きると思った。約一万字だが、大事なことが沢山詰まっていたと感じる。

 是非、御一読下さい!

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