ライトな文体とキャラクターで語られる本格的な女性視点ディストピア作品

実の所、恥ずかしながらこれまでディストピア小説というものは基本男性視点のものしか嗜んでいませんでした。

完全に管理され、歪んだ階層社会の中で足掻き。場合によっては暴力や知恵、あるいは外に踏み出す事で状況を打破する。枠組みを壊し明日を掴む物語が殆どで。

当然、主人公が女性の場合もあったかもしれませんが。それでも彼女たちは大抵の場合、女性らしさではなく、男性と同じ手段で世界に立ち向かっていて。

そういう意味で本作のマリアは僕にとって衝撃的なキャラクターでした。

我々から見れば恐ろしいディストピアの中で、彼女なりに理性と正しさを持って少しでもマシな未来を掴もうと。足掻いていく姿は彼女の真っ直ぐなキャラクター性は強く心に刺さってきます。

そして、最終的に彼女が選んだ選択肢に関しては語るに野暮なので言及しませんが。ある意味マリアの処女受胎、代理母、格差社会といったありふれた素材で、ありふれた出産というテーマを描きながらも非常に刺激的で。

最後まで自分と、自分が育むものの価値を歌い上げた本作はマタニティパンクと呼ぶに相応しい快作だと思います。

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