キャラクター資料 エラムとトゥイ

キャラクター資料 エラムとトゥイ

キャライラスト:https://www.pixiv.net/artworks/99198091


〈エラム〉

 魔障に侵された少年。クルケアンの作中で出てくる魔力とは魂が精神や肉体に及ぼす力である。人が獣の時代から持っている力ではあるが、現世では微々たるものに過ぎない。稀に先祖返りする者が巨大な魔力を持ち、また神々が大地に残した力と合わさることによって祝福者となる。ただし、精神や肉体が脆弱な場合、魔力がそれらを蝕み、やがて死に至る。

 エラムは成人まで生きられないと診断されていた。両親が西門付近の療養所に預けたのは、都市の東側では魔獣の瘴気が風で運ばれてくるためである。比較的富裕であった両親は療養所の庭の一室の小屋を改造し、エラムが好きな本を揃え不自由なく生活をさせていた。

 エラムは遊びに来るトゥイに本の読み聞かせをすることで、星や人の物語に興味を持ち、夜には望遠鏡で空を、昼には通りを歩く市民の観察をし始める。作中で観測者として活躍していくのは、幼少の頃、自分が健康であったらどんな人生を送っていたのだろうかと、自分と他人の人生の立ち位置という距離を推し量っていたことに由来する。

 また薬師であるシャヘルとの出会いで神薬(イル=クシール)を処方され、その生を少し先まで延ばすことになる。時間を得たエラムは生きた証をこの都市に残そうと、水力を用いた都市の機械化を考えるようになった。

 古代の観測官にしてハドルメの生き残りであるアバカスとの出会いは、彼の技術者、観測者としての生き方を決定づけることになった。アバカスを師と兄と慕い、また自身とトゥイとの婚約の証人とすることで彼のクルケアンに対するわだかまりを解いていく。最終話でトゥイとの間に生まれた子を、アバカスの妻と同じであるフェリシアと名付けたのは、アバカスが夢見て、そして得られなかった幸せな未来を、自分達が受け継ぎ築き上げていくという、誓いからである。

 シャヘルの薬草園を受け継ぎ、またイル=クシールの栽培に成功したことは自身の魔障の治療だけでなく、魔人化した人々の延命にも繋がっていく。こうして病室を出た少年は内乱で荒廃した都市や人を救うことになった。


〈トゥイ〉

 エラムの幼馴染。幼い頃、散歩に出かけたトゥイは療養所の窓から顔を覗かしていたエラムと顔を合わせることになる。無邪気に遊びに誘うも、すまなそうに首を振るエラムを心配した彼女は部屋を度々訪問していく。最初は気遣って看病がわりに部屋を訪れていたのだが、いつしかエラムが読み聞かせる物語に夢中になり、作家になりたいという夢を持つようになった。そして次第に聡明で優しいエラムに惹かれるようになり、その気持ちを隠さず、また自然にエラムと接していく。エラムは当初、余命を考えてその気持ちに応えようとしなかったが、シャヘルが処方したイル=クシールのおかげで数年の時間を得た時、トゥイの気持ちを受け入れるようになる。

 トゥイはその短い時間でエラムの名が都市に残るように全力で彼を手伝っていくが、内心、近いうちに来る別れを恐れ震えていた。そのためイル=クシールの栽培に成功したことを一番喜んだのは彼女であり、十年後、二十年後というようにエラムとの幸せな未来を夢見るようになる。

 関わった人々の物語、特に神々と古代の失われた歴史を文字にして残そうとしており、戦乱が収まった後は次々と本を出版していく。見聞きが中心であり、史料に乏しく物語性が強いものの、クルケアンの人々は競い合ってその本を購入し、夜には子供達に読み聞かせるようになった。いずれはアスタルトの家の仲間の伝記も出したいと考えているが、これからの人生や活躍もあるので、将来の原稿資料として「ある作家の妄想日記」を執筆し、広場に貼りだす程度に留めている。セトら関係者にとって恐怖以外の何物でもないのだが、一応、偽名を使っている事や、事情を察している市民の熱狂的な支持もあり、止めさせることができないでいる。ダレトはレビへの求婚の顛末をこの日記で公表され、頭を抱えていたという。

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階段都市クルケアン 夏頼 @natsuyori_kiyohara

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