野村聡太の告白

季節は7月。期末試験も終わり、いよいよ夏休みが目前に迫っている。気温は日に日に高くなり、梅雨が明ける前だというのにうだるような暑さが続いている。


そしてここ最近、相沢と話すことが増えて、俺がいったいどういう人間なのかがわかった。




今まで俺は本音と建前を使い分けることを苦痛に感じていた。人に合わせて、自分の好きなことを隠して、嫌いなことをする行為に嫌悪感を抱いていた。


けれど、相沢と会話してて、気付いたことがあった。


相沢がよく、俺に聞いてきた「楽しかった?」とか「聡太はどう思う?」という質問。あれはからかっているというのもあるんだろうけど、俺の感情が分かりづらいってことなんじゃないかなぁ。


だから、頻繁にああいうことを聞いてきたんじゃないのかなぁ。




そう思った。




俺は自分が嫌だから、人付き合いを避けて、相手に合わせることもやめた。でも、それは相手も同じ事で、俺の態度で相手も嫌な思いをするかもしれないという当たり前のことを忘れていた。


俺が嫌だから、相手に自分の感情を伝えないのは、コミュニケーションを最初から拒否してるも同然だ。それでは、誰からも相手されなくなってしまう。

人付き合いが苦手だからって、思っていることを口に出さないのは、違う。


相沢と話すようになって、ようやく分かったんだ。だから、俺は想いを言葉にする。自分の気持ちが相手へ伝わるように――――――――――――――。




◇ ◇ ◇




1学期の終業式当日、俺は相沢を呼び出した。相沢は「これから夏休みだ〜」と能天気だったが、俺にはそんな余裕はない。




「俺、相沢にとっても大切な話がある」


「何?聡太、急に改まって・・・」


「・・・実は俺、お前のことが・・・す、好きだ」




他のクラスメイトは帰宅したり部活に出たりして、誰もいなくなった教室で俺は相沢に『好きだ』と打ち明ける。・・・言ってしまった。もう後ろには引けない。


俺の告白に相沢は「ん?」と少し俺の表情伺ったが、




「・・・え?マジ?嬉しい!あたしも聡太のこと好きだよ」




と言ってくれた。告白は・・・成功だ。そして、




「・・・うん、ありがとう。俺たち、ちゃんと付き合おう」


「そうだね・・・じゃあ、恋人同士なんだから名字で呼ぶのやめて。優香って呼んで」


「そうだな・・・優香、せっかく付き合い始めたんだし、キス・・・くらいはしようか」


「うん・・・そうだね。聡太、これからずっと一緒だよ♡」




と言い、優香と深いキスを会わした。ファーストキスだ。そして再び、優香と互いに顔を合わせ、唇が触れ合う。それは脳が溶けるような、すっごく柔らかい感触だった。・・・キスの味って、そういう味だったんだな。




こうして俺は優香と付き合うことになった。そして、俺にとって、そして優香にとっても人生最初の恋人ができた瞬間でもあった。

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