相沢優香と行くカラオケ②




「どうする?ちょっと歌ってからご飯にする?それとも先に食べる?」


「ええと、俺は本当に歌わなくてもいいから・・・あ、これがコラボメニューか。別に作中の料理を再現してるとかじゃないんだ。普通のカレーとかピザっぽいけど」


「あはは。そういうメニューは東京のコラボカフェでもないとないかな~でもここの料理おいしいからおすすめ!わたしはパスタにしようかな」


「あ、じゃあ俺は・・・カレーで」


「おっけー。じゃあ注文しちゃうね」




パスタって、何か女子っぽいな。いや、俺もパスタは好きだけど。外食の時は家で食べることのない料理とか食べたいだけで。まあそれを言うならカレーも家で食べれるじゃないか、と思うけどピザやハンバーグという気分でもないんだよな。優柔不断の逆、妥協の境地だ。


相沢は注文を終えると、操作端末で楽曲検索をしていた。料理が来るまで歌っていようということだろう。正直彼女がどんな歌を歌うのか気になる。勝手な偏見だけど、恋愛ソングとか好きそうだ。




「じゃあ、あたしから歌うね。聡太もコーラスとか合いの手入れていいからね」


「え?突然そんなこと言われても・・・」




そもそも、知らない曲に合いの手入れるとか、訓練されたアイドルファンでもないと不可能じゃないのか。『フー!フー!』とか、『ハーイハーイ、ハイハイハイハイ!』とか、あんなの出来るのはオタクの中でも陽キャ寄りだろう。




俺もアイドルや声優のライブには行ったことがあるけど、サイリウムを振るのも躊躇う程度にはノリが悪いのではないか。本心では盛り上がりたいのだけど、はしゃいでる自分を冷めた目で見る俯瞰した自分がいて、素直に盛り上がれない。


でも、相沢に言われた以上合いの手を入れるのがマナーというか、失礼にあたるのだろうか。相手に合わせて興味ないことをするのって、やはり心の負担になる。


と、俺が思っていると、聞き覚えのあるメロディが部屋に流れる。そして、画面には俺のよく知る曲名が表示された。




「ミラガのオープニングじゃないか!」


「今やってる方だけどね。最初にやった奴の方が好きだけど、あたしの声だと高音が歌いづらいからこっちの方が歌いやすかったりするの」




結果、めちゃくちゃ盛り上がった。相沢の歌声は落ち着いた声から発せられる、透き通った秋空のような歌声だった。歌の技術について詳しくないけど、かなり上手い方だと思う。それこそ、普通のカラオケならノリきれない俺でもコーラスを入れる程テンションが上がったのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る