俺の大好きなアイドルの話

握手会の目当てはもちろん、ゆいゆいこと春日優衣かすがゆいちゃん。地上に舞い降りた最強にして最後の天使である。




朝9時30分、開場。俺は厳重な警備を長い行列とともにくぐり抜け、会場に入った。そして朝10時の握手会開始に向けて、大勢のファンが一斉に走り出し、それぞれのブースに列を作る。また握手会と平行して、ミニライブが午前と午後、計2回行われるようだ。


そして俺は真っ先に、ゆいゆいが座るブースへに駆け出した。・・・しかし、すごい行列だ。ゆいゆい、やっぱり人気あるんだな。




「皆さんお元気でしたか〜?春日です。今日、握手会に参加する皆さんに私からお知らせしたいことがあります。握手会に参加する際はまず、手をしっかり消毒して、綺麗にしてから参加してください。あと、今日は暑いので水分をこまめに摂ってから参加してください。以上、春日優衣からのお知らせでした!」




ゆいゆいが拡声器を使い、そう言うと、レーンが開放され、握手会が始まった!




握手会のテンポは意外と速い。1人1回あたり3秒、粘っても5秒程度で強制終了となり、次の人と握手をすることになる。ゆいゆいほどの人気メンバーとなれば、それが何時間も続き、お昼休憩を挟んだとしても、夕方までひたすら握手をすることになる。




俺が列に並んでいる間、色々考えているうちに、ついにゆいゆいと握手する番が回ってきた!俺は手前にあった消毒液で手を洗い、ついにゆいゆいと対面する!




「ゆいゆい、おはよー!」


「おはよー!」


「俺、久しぶりにゆいゆいに会えて嬉しいよ」


「私も元気そうな聡太くんに会えて嬉しい♡」


「ありがとう!さすが俺のゆいゆい」


「うん!ずーっと一緒にいようね♡」


「言ったな?約束だぞ!」


「はーい」




俺とゆいゆいはこんな感じで会話のやり取りをするのだけれど・・・俺、ちゃんとした彼女がいるんだよな。俺は彼女がいる身になったのに関わらず、このままアイドルオタクを続けるべきかどうか・・・握手会の後、真剣に悩み始めた。




俺は優香に一度相談することにした。優香の答えはこうだった。




『そんなの気にしなくてもいいじゃん。彼女いても、アイドルのファン続けている人いっぱいいるよ。実際あたしのお母さんも昔からある芸能人のファンで、今でもその芸能人のイベントによく出かけてるし』




・・・そうなんだ。意外だな。でも俺は彼女ができた以上、どこかで区切りをつけなければいけないと思った。そして俺は一線を引き、影ながらゆいゆいを応援することにした。俺の決意に、優香は『これであたしが聡太のこと、ずーっと独り占めできるね♡』と言ってくれた。

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