船出

 現実が港で幻想が船か。あるいはその逆か。
 主人公の心境は、船出を待つ乗客のようでもあり船出を決める船長のようでもある。
 丸い粒々の泡が海中を騒がす度に、出港した船はあおられ揺れる。船は海面を往来するのではなく、海上と海底を結ぶ連絡路のようなものだ……それは潜水艦ではなく、あくまでもある決まった二つの点を往復するためだけの船である。
 いずれにしても、二人だけの『竜宮』が築き上げられていく過程を読み味わえる内容だった。
 詳細本作。

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