今読まねばならない────

最初の一文を目にしたとき、私はそう決意した────いや、させられたのだ。
何も分からぬうちに淡々と描写される主人公の日常は、特異でありどこか牧歌的である。これは知っている。見たことがある。この語り口を、どこかで。
それなのに、謎ともされず物語は進む。奇妙な安心感。人類は瀬戸際に立たされているのに、だ。
私たちは安心して彼の冒険に身を委ねる────まるで幼き頃読み聞かせられたおはなしのように。
しかし違う。
この既視感はそういうものではないのだ。
私はこの素晴らしい小説をスマホで読んでいた訳だが、それが間違っていたのだ。
これは文庫ではないか?
ハヤカワ文庫SFで、あの独特な表紙絵が思い浮かぶ。
いやそれとも、あの鈍器かと思うような分厚いハードカバーの、あのくそ重い本ではなかったか。
とにかくこの小説はその類であり、私はそれに出会えたことを感謝する次第である。
願わくば早く完結し、感動のラストまで導いてほしい。

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