氷海のヴェルヌ

カムリ

氷流

氷海 Ⅰ

 赤い吹雪が、天を貫いていた。

 終わりを告げる詩は、風を裂いてきこえてくる。

 宝石のような氷片が、螺旋をかいて光を放つ。

 炎のまぼろしの向こうで氷の海はさびしく、星宙さえも凍てつこうとする。

 ただ振り返る。

 積み重ねてきた、輝かしい旅路を想う。


 目映い太陽を。

 深紅の月を、

 美しい凍土を、

 嶮しい隘路を、

 舞い散る華を、

 彩られた残酷を、

 ――何もかもを、愛していた。この物語の、すべてを。

 

 一筋、光が。あらす雲の切れ間から差した。

 たった一つの真実だけが、世界の果てに咲いていた。


『人が想像することは、必ず人が実現できる』

 ――ジュール・ヴェルヌ(SF作家、1828~1905)

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る