第6話 煮しめdeもったいない

夜更けの台所からこんばんは。


お正月が過ぎ、余ったお煮しめを炊き込みご飯にリメイクしました。


お煮しめを粗く刻んで味を整えてお米と炊くだけなんですが、簡単なくせに美味しいのが嬉しい。ちょっと刺激が足りない人は一味をふりかけるとやみつきですよ。


どうも『もったいない』『食べ物に感謝しろ』という精神を叩き込まれて育ったせいか、リメイクして食べきるだけでたいそうな満足感があります。


でも、このもったいない精神が自分を苦しめたこともありました。


うちの長男は生まれてからミルクをガブガブ飲み、離乳食もモリモリ食べて育ちました。ところが3歳頃から突然、偏食が始まったのです。


何を作っても見ただけで「いらない」とおしのけられ、ときには床に投げ捨てられたり、吐かれたりしました。野菜はほとんど食べない、この前食べていたのに今日は食べない、食べると言ったのに食べない。


仕事と家事のかたわら、疲れた体に鞭打って作ったものを口もつけられずに投げ捨てられたとき、正直言って病みました。


休みたいのを堪えてせっかく作ったものを食べられない虚しさは相当なものです。しかも残されたものを捨てるには『もったいない精神』が働いてすごく罪悪感に苛まれる。かといって自分が落ち込んで食欲もないのに食べなきゃいけない苦痛たるや。

おまけに子どもの残したものを余計に食べるせいで太り、たるんだお腹の醜い自分に自己嫌悪する悪循環。


子どもが食べ切れる分だけ作る、運動させてお腹空かせる、おやつは控える、可愛く盛り付ける、食器を替える、親も一緒に食べ食事は楽しいものだと教える……ありとあらゆる育児書やネットのアドバイスを実践し、惨敗しました。


何を作っても食べない、しかも食べないくせにおやつやジュースは欲しがる。そんなときに限って悪気のない姑や夫がお菓子を買ってくるという負のコンボ。


そんなある日、鏡を見た私は自分の顔にぎょっとしました。すっかり荒んで余裕のないギラギラと窪んだ目のやつれた顔でした。


そこで思い切って『もったいない精神』を捨て、子どもの残したご飯は食べないことにしました。

自分が作ったものが残飯となり、それを食べて太ることへの自己嫌悪が偏食そのものよりダメージが大きいと思ったんです。

そして今日何を食べたかより、この3日間で何を食べたか考えるようになりました。


幸い、息子は納豆だけは大好きだったので、とにかく納豆だけでも食べたら万々歳。あとは食べたらラッキーくらいに思おうと決めたのです。

当時は納豆を『メシア』と呼んでましたね。


最近は少しずつ食べるものが増えてきました。

ゆっくりでもいうら、息子に食べ物のありがたみやもったいない、ありがたいと感謝する気持ちを伝えていかなきゃなと思う母ちゃんなのでした。



【深水家のお煮しめでリメイクご飯の作り方】


炊飯器に米2合を入れます。

酒、みりん、しょうゆ、めんつゆ、白だし、水を炊飯器の目盛りに合わせて入れます。


荒く刻んだお煮しめ(里芋は除く)を混ぜて炊飯器のスイッチオン。

お好みで刻んだ油揚げを足してもいいかもです。


仕上げに胡麻や一味をふりかけるとなお美味しいと思います。


どうぞ召し上がれ。

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