立ち飲み母ちゃん
深水千世
第1話 はじまりは紅茶豚の角煮
夜更けの台所からこんばんは。
私、深水千世はあることをきっかけによなよな晩酌するようになりました。子どもたちを寝かしつけた21時過ぎ、リビングでもなく自室でもない、台所でウイスキーを立ち飲みするのです。
今夜の肴は『紅茶豚の角煮』でした。
角煮は脂身の存在が最も輝く料理といえるでしょう。箸をいれたらほろほろと崩れる肉、味の染みた茶色い煮卵、トロトロのネギ。
茶色いおかずはお酒もすすむがご飯もすすむ!
脂身嫌いのはずの夫も角煮はぺろりとたいらげます。
最初はいつもの作り方で角煮を作っていたのですが、ふと「豚肉を紅茶で煮ると柔らかくなる」という話を思い出し、下茹でに紅茶をぶっこんでみました。酔ってなくても、唐突に思い切ったことをする習性があるのです。
結果はまずまず。
でも作り方に「ああすればよかった!」という課題と改善点が。
思いつきも行動を起こすのも大事。
でも失敗を失敗のままにしない、転んでもただじゃ起きない精神はもっと大事。
今度は満足いく仕上がりにしてみせます。
角煮が照り輝く鍋を見ながら、そういう風に思ったことや感じたことをエッセイに残そうと思いつきました。
いつもツイッターで作った肴の画像を呟いて記録しているのですが、ツイッターって『言葉の流しそうめん』だと思っていましてね。目の前を流れてしまったらそれっきりのことが多い。
それはそれでいいんです。食べ物だって食べたらそれっきり消えるもの。
でも私はその肴をどんな気持ちを抱えながら作って食べたか記録して、手繰りやすくしたいなと思いました。それにはエッセイのほうがいい気がしたのです。
母ちゃんとして、奥さんとして、女として。
他愛もなくてどこにでもあるような、でも確かにそのとき私は生きていたという証になるもの。それが一日の終わりに台所でウイスキーを立ち飲みしながら考えるあれこれに凝縮されています。
なぜ台所かというと、睡眠をとるベッドの次に多くの時間を過ごす場所であり、私の最前線基地であり、瞑想場でもあるから。
深水家の台所での呟きにお付き合いください。
レシピは毎話、最後にざっと掲載します。
『ざっと』なのは、いつも目分量だから。そんなざっくり立ち飲み母ちゃんをよろしくお願いします!
【深水家の角煮の作り方】
ネギの青い部分と皮付き生姜と切った豚バラを30分アクをすくいながら茹でます。
下茹での湯を少し取り分け、いったん肉を取り出して水気をとります。
鍋に下茹での湯、水、調味料を入れて火にかけます。調味料は白だし、砂糖、みりん、酒、醤油。
煮たったら落とし蓋をして茹で卵とネギを加えます。
1時間煮たら蓋をはずし、煮詰めて完成。
ねぎをトロトロさせたくない人は入れるタイミングを蓋をはずしてからに遅らせてくださいませ。
どうぞ召し上がれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます