第14話 しっとりおにぎりのアルミホイル

夜更けの台所からこんばんは。


突然ですが、みなさんはおにぎりの海苔はしっとりとパリパリ、どちらがお好きですか?


私はコンビニなどで買うパリパリ海苔のおにぎりも好きだけど、なんだかんだいって幼い頃から馴染みのあるしっとりおにぎり派です。


幼い頃から遠足やピクニックのときに母が作ってくれたおにぎりが、私のおにぎりの定義になっています。


形は丸、海苔はしっとり、具はいつも梅干しで、アルミホイルで包んでくれるのです。


ところが、中学時代に友人たちの間でパリパリ海苔が小さなブームになりました。

当時はソフトボール部に所属していたので、部活仲間とお弁当を食べる機会が多かったのです。


誰が始めたか、おにぎりの海苔は巻かずにラップに包んで持ってきて、食べる直前に白いおにぎりに巻く、パリパリおにぎりでした。 

私も真似したのですが……なんだか寂しくなってしまったのです。


パリパリも美味しいし、今までと違う食感は楽しいし、ふやけた海苔が歯につくこともない。とても良い。良いんだけど、なんだか泣きそうになりました。


しっとりおにぎりを握ってくれた母を否定した気分になってしまったと当時は思いました。大袈裟かもしれませんが、母のやり方を拒んでしまった気がしたのです。

でも今では、おにぎりなのに母のおにぎりではないことが単に寂しかったのだと思います。


それ以来、私は頑なにしっとりおにぎりを握り続けています。

湿った海苔の匂い、ほどよく握られたねっちりした弾力、梅干しで赤く染まって塩気のしみたご飯。リズミカルに握る母の姿が重なります。


今は私も母となりました。

息子たちにおにぎりを握る立場になってみると、『母が梅干しばかりだったのはポンと入れるだけで楽だし殺菌作用があったからかな』とか『海苔って結構お高いよね』などと作る側から見えてくる些細なことがなんだか面白おかしいです。


小さい頃、おにぎりを食べたあとにアルミホイルを丸めて持ち帰っていました。

単に周りにゴミ箱がなかったり、捨てるのが面倒だったからなんですが、今は子どもが持ち帰る丸めたアルミホイルを心待ちにします。 

「美味しく全部食べてくれたんだな」「お友達と楽しくお喋りしながら丸めたのかな」などと思うと、ゴミに過ぎないはずのアルミホイルが愛おしく思えるのでした。



【深水家のおにぎりの作り方】


おにぎりの握り方はあえて書くほどでもないので、よく使う具を。


おかか、鮭、山椒の佃煮、塩昆布、唐揚げ、そぼろ、ゆかり、わかめご飯、そしてやっぱり梅干しです。

みなさんの定番はなんでしょう?


どうぞ召し上がれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

立ち飲み母ちゃん 深水千世 @fukamifromestar

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ