第12話 自家製めんまの相槌

夜更けの台所からこんばんは。


突然ですが、うちの夫は喋らない人です。

常に省エネモードかというほど自宅では無口で、喋ってもボソボソっと。下手な打ち方をしたそばを茹でて箸で持ち上げたときみたいにボソボソっと。

どうも外で気を遣い過ぎて、家に戻ると電池が切れちゃうらしいのです。


私から話をしても相槌というものがない。『打てば響く』という言葉がありますが、自宅の彼は打っても打っても鳴りゃしない破れ太鼓。


そのかわり、どんな話も口を挟まず最後まできちんと聞いてくれます。

「はいはい」とちゃんと聞かずに流される……なんてことはないわけです。そこはとても良いところだなと思います。


だけど「へぇ、そうだったんだ」「うんうん、そうだね」と相槌が欲しい夜もあるわけです。


そんなとき、母ちゃんは歯応えのいいものを肴にします。セロリ、柿の種、沢庵みたいに『バリボリ』と心地いいオノマトペがするやつです。


今夜はいただいた筍をアク抜きして、自家製めんまにしました。


バリボリ、バリバリ、バリボリ。


あれこれ考えながら噛んでいると、相槌みたいに聞こえてきます。


「バリボリ(うんうん)」

「バリバリ(それは大変だったね)」

「バリボリ(そうかぁ、わかるよ)」


そうやって自分勝手に妄想すると、なんだか「ふふっ」と笑えてきます。幸せな酔っ払いですね。


嫌なこともバリボリ噛み砕いて美味い酒で飲み下して、明日も母ちゃんは笑うのです。



【深水家の自家製めんまの作り方】


アク抜きした筍を厚さ2〜3mmの一口大に切ります。

鍋にごま油と筍を入れ、火にかけます。油がまわったら水・中華スープの素・酒・醤油・鷹の爪を入れて煮詰めます。

汁気がなくなったら、みりんとごま油を加え、また煮詰めて完成です。


ちなみに筍のアク抜きはヌカと唐辛子派です。


どうぞ召し上がれ。

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