夢と現実。それから過去と現在、未来のあわいに――。

 主人公はどこにでもいるような、女子高生だった。友人はいるけれど親友はいない。現実的な目標もない。ただ、ピアノだけが唯一残っていた。
 そんな彼女が古びた喫茶店で、奇妙な経験をする。喫茶店で主人公を出迎えたのは、メイド服を着た少女だった。歳を尋ねると少女は「享年十二歳」と答える。少女が働いている理由を尋ねると、少女は「働く」ことの意味を主人公に教えてくれた。そして少女はたどたどしいながらも、喫茶店にあったピアノを弾いてくれた。
 働きことの意味、そしてピアノが、主人公の目標を明確にしてくれた。
 主人公は後日、再び喫茶店に行こうとするが、あったはずの所に見当たらない。話によると、喫茶店はベーカリーショップになって、移転したのだという。そこには主人公の知る少女がいたのだが――。
 夢と現実のあわいに、少女が主人公に教えてくれたこととは?
 そして、少女の正体とは?

 すべての文章がつながり、意味を持ち、最後には落ち着くべきところにちゃんと落ち着いている。凄いものを拝読した、という感覚がある。どこか純文学的な匂いもするが、幻想文学というのが当てはまるのかもしれない。読了後、不思議な感覚に陥ります。

 是非、御一読下さい。

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