どんなふうに生きていけばいいのかわからない女子高生 遠野まわたと、生きたかった明日を迎えられなかった少女の夢が重なるときに、物語が動きだす。
綺麗な旋律の詩を読んでいるような文章の流れに美しく飾りつけられたルビ。著者様の世界観がふんだんに落としこまれた素敵な小説で、夢のなかに惹きつけられ吸いこまれるように夢中で拝読させていただきました。
短編なので、言葉を重ねるほどネタバレになってしまうのがつらいところ。ぜひとも読んで確かめてください。こころが優しくなる、そんな物語です。
とてもやわらかな手触りの夢をみていたような、そんな読了感をいただきました。
おとなのためのお伽噺のような、やさしい物語をもとめる読者さまに読んでいただきたい一作です。
主人公はどこにでもいるような、女子高生だった。友人はいるけれど親友はいない。現実的な目標もない。ただ、ピアノだけが唯一残っていた。
そんな彼女が古びた喫茶店で、奇妙な経験をする。喫茶店で主人公を出迎えたのは、メイド服を着た少女だった。歳を尋ねると少女は「享年十二歳」と答える。少女が働いている理由を尋ねると、少女は「働く」ことの意味を主人公に教えてくれた。そして少女はたどたどしいながらも、喫茶店にあったピアノを弾いてくれた。
働きことの意味、そしてピアノが、主人公の目標を明確にしてくれた。
主人公は後日、再び喫茶店に行こうとするが、あったはずの所に見当たらない。話によると、喫茶店はベーカリーショップになって、移転したのだという。そこには主人公の知る少女がいたのだが――。
夢と現実のあわいに、少女が主人公に教えてくれたこととは?
そして、少女の正体とは?
すべての文章がつながり、意味を持ち、最後には落ち着くべきところにちゃんと落ち着いている。凄いものを拝読した、という感覚がある。どこか純文学的な匂いもするが、幻想文学というのが当てはまるのかもしれない。読了後、不思議な感覚に陥ります。
是非、御一読下さい。