お人形の夢と目覚め
宵澤ひいな
第一楽章 子守唄
柔らかい
少女の母は喫茶室『メロディードール』を経営している。母は毎日、忙しい。その娘の仕事と言えば、決まった時刻に枕許の薬壜を、左から順に飲んでいくぐらいのものだ。
母の手伝いが、できない。好きなピアノを弾くことさえ、できない。
少女は寝ても覚めても、母の経営する喫茶室の店員に、なりたい。学校に通ったことは、ない。喫茶室『メロディードール』が、彼女の宇宙だった。
一風、変わった喫茶室だ。店の名物はピアノ。
ロココ調の家具とピアノが隣り合う喫茶室に、流れるクラシック音楽は、個性豊かな生演奏だった。
ピアノを弾く人は、音大生だったり、飛び入りの客だったりした。
ゆるやかなワルツやノクターンが、
ウェイトレスの服装は、エプロンドレス。黒い膝丈のワンピースに、白いエプロンを重ねたメイド服。足許は黒いタイツに、黒光りするエナメルのワンストラップシューズ。それは少女の憧れの制服だ。
少女は一途に、喫茶室でピアノを弾き、注文の品を運ぶ人に、なりたかった。
♪♪♪
はたらく人に、なりたい。
その夢が、叶えられようとする夜、少女は
『メロディードール』の奥の間の照明が落ちた。
そして少女は、
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